2021 Fiscal Year Research-status Report
Term Structure of Credit Spreads and the Macroeconomy in Japan
Project/Area Number |
19K13745
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Research Institution | Nagoya University of Commerce & Business |
Principal Investigator |
小林 武 名古屋商科大学, 経済学部, 教授 (70751486)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社債スプレッド / 期間構造 / マクロ経済 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関して2021年度の実績は以下の2点が挙げられる。1点目は、2020年度に取り組んだ個別銘柄の社債のイールドカーブの推定手法を改良し、社債のゼロクーポンイールドの推定数を拡充した。具体的には、まず、候補となるモデルとして、B-Spline,Nelson-SiegelおよびSvenssonモデルに加え、McCulloch(1975)らのCubic Splineモデルを追加した。さらに、個別銘柄の社債の流動性を示す変数(残存期間、発行時からの経過年数、気配値の最高値最低値の差額、銘柄の発行額、価格情報を報告する証券会社数など)を考慮した未知パラメータ推定手法を考案した。また、流動性指標を考慮した最適化手法は、社債利回りの期間構造の推定誤差を小さくすることに寄与することが示された。分析結果を、日本ファイナンス学会第29回大会、日本金融・証券計量・工学学会2021年夏季大会、日本経営財務研究学会第45回全国大会、日本保険・年金リスク学会第19回研究発表大会で発表した。2点目は、グローバルファクターモデルのパラメータ推定方法の改良を行った。未知パラメータ推定方法に際してパラメータ数が増加し、統計的に有意なパラメータが推定できないことが想定される。そこで、Diebold, Li and Yue (2008)にならい、マルコフ連鎖モンテカルロ法を同モデルのパラメータ推定に適用した。上記と異なる本研究課題の新規性は、先行研究では潜在因子を、水準・傾きの2つでとらえていたが、今般は曲率ファクターを追加し3ファクターへ拡充した。さらに、先行研究の推定方法では、実データから個別銘柄の因子を推定して後、共通ファクターを推定する2段階アプローチがとられていた。本研究課題では、社債スプレッドカーブの実データから共通ファクターを直接推定する1段階アプローチを採用した点に新規性が見いだされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までも進捗状況は以下の3点にまとめられる。第1に、本研究課題のベースとなる複数の社債銘柄のゼロクーポンイールドを推定した。推定に用いる社債価格データは、長期時系列データを作成するために、日本証券業協会が算出する店頭売買参考統計値と、非上場債券の時価評価に適した日本経済新聞社含む4社が共同で提供するJSPriceを結合して利用した。社債スプレッドの推定銘柄数を拡充する過程で、様々なイールドカーブモデルを用いて、本邦社債の実データに適合するイールドカーブの推定方法を検討した。さらに、パラメータ推定する際に社債の流動性を考慮した重み付き最適化の手法を検討した。当該アプローチは、当初研究計画には明示的に検討していなかったテーマである。第2に、個社別のマクログローバルファクターモデルを開発し、パラメータ推定方法を従来の最尤法から改良を加えた。第3にマクロ経済変数に関しては、日米の先行研究を調査し、社債スプレッドと関連性の高い指標を選出した。社債スプレッドの期間構造とマクロ経済の関係については、社債スプレッドの期間構造がマクロ経済変数の予測にどの程度有効かに関する分析を行った。特に、社債スプレッドの傾き因子の予測可能性が景気予測に有効であることを示すことができた。また、当該業績を論文にまとめることに注力し、海外専門誌に採択された。一方、当初研究計画で予定していた社債スプレッドの期間構造とマクロ経済変数との相互依存関係の分析や非線形への対応、リスク管理などへの取り組みは、次年度の研究課題となった。 以上の点を総括すると個社別の社債スプレッドの推定に関しては、当初の計画と比べると、個別銘柄の推定とパラメータの推定方法に時間がかかってしまった。社債スプレッドの期間構造とマクロ経済変数との相互依存関係についての分析にはいたらなかったため、やや計画対比遅延していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の推進方策は以下のとおりである。 これまで取り組んだ金利の期間構造モデルと推定方法を駆使し、社債スプレッドのマクロファイナンスモデルを推定する。モデルから推定された共通ファクターとマクロ経済変数の関係について調べる。2020年度は、社債スプレッドの期間構造からマクロ経済変数の予測可能性について考察を行ったが2022年度は、社債スプレッドの期間構造とマクロ経済変数の相互依存関係を調べる。具体的には、インパルス応答関数、分散分解により社債スプレッドの期間構造の共通要因が個別要因に与える影響度や社債スプレッドの共通要因とマクロ経済変数の動学的な相互依存関係を調べる。2019年度の取り組みのなかで、無裁定条件を課したアフィン型の期間構造モデルからリスクプレミアの推定と分解を試みた。2022年度は、社債スプレッドの期間構造の情報からデフォルトリスクプレミアムとその分解に取り組む。こうしたリスクプレミアムに関する分析は、本邦の社債スプレッドの期間構造に解明につながる。なお、未知パラメータ推定方法に際して、2021年度に取り組んだマルコフ連鎖モンテカルロ法に加え、Doshi et al(2006)などで提案されたダイナミックファクターモデルに関する疑似最尤法・2段階推定法・EMアルゴリズムなどを検討する。 更なる取り組みとして、社債スプレッドの非線形性を鑑み、レジームスイッチング期間構造モデルを推定やリスク管理・投資戦略への応用に取り組む。
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Research Products
(5 results)