2021 Fiscal Year Research-status Report
新規開業企業の将来性と金融機関の目利き能力に関する実証分析
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19K13746
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
大鐘 雄太 南山大学, 経済学部, 准教授 (70801968)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 起業 / 業績 / 異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の2つの影響について分析した。
第一は、「事業機会型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」である。この分析では、「事業機会型の起業家が、厳密な意味での事業機会型の起業家と、それ以外の事業機会型の起業家とに分類可能である」という先行研究の示唆に着目し、両者の違いが起業後の業績にどのような影響を与えるかを明らかにすることを目的とした。分析の結果、厳密な意味での事業機会型の起業家は、それ以外の事業機会型の起業家よりも起業後の業績が良いという結果が観察された。第二は、「生計確立型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」である。この分析では、「生計確立型の起業家が、解雇がきっかけとなった生計確立型の起業家かどうかによって、起業後の業績に違いが生じる」という理論的予想について、実証的に検証することを目的とした。分析の結果、解雇がきっかけとなった生計確立型の起業家は、それ以外の理由がきっかけとなった生計確立型の起業家よりも起業後の業績が悪いという結果が得られた。
以上の結果は、事業機会型の起業家については厳密な意味での事業機会型の起業家かどうかを、生計確立型の起業家については解雇がきっかけとなった生計確立型の起業家かどうかを、それぞれ識別することによって、金融機関をはじめとした資金提供者は、新規開業企業の将来性をより正確に予測可能になることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)昨年度までに執筆した2本の論文(「起業家の人的資本が新規開業企業の資金調達に与える影響に関する実証分析」、「メインバンクの毀損が企業の現金保有に与える影響に関する実証分析」)を改訂し、査読付き国際学術雑誌に投稿すること、 (2)金融機関の目利き能力を分析するためのアンケートを実施すること、の2点を計画していた。「起業家の人的資本が新規開業企業の資金調達に与える影響に関する実証分析」については、論文の改訂後に投稿した結果、査読付き国際学術雑誌に採択された。「メインバンクの毀損が企業の現金保有に与える影響に関する実証分析」については、学会・研究会で報告し、コメントを踏まえて論文を改訂した後、査読付き国際学術雑誌に投稿した(査読中)。また、「金融機関の目利き能力を分析するためのアンケート」については、実施だけでなく集計も完了させ、すでに分析の段階に至っている。さらに、当初は計画していなかったが、先述の2つの影響(「事業機会型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」、「生計確立型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」)についても、本格的な実証分析を行うことができた。以上のような理由から、本研究課題は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、(1)「金融機関の目利き能力を分析するためのアンケート」の分析結果をまとめる、(2)「事業機会型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」、「生計確立型の起業家の異質性が新規開業企業の業績に与える影響」を論文としてまとめる、の2点を目標とする。
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Causes of Carryover |
実施したアンケートの費用を予定よりも抑えることができたため、物品費に未使用額が生じた。未使用分は、現在執筆中の論文の英文校正費として、次年度に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)