2021 Fiscal Year Research-status Report
The Analysis of the Movement of the inter-Indiginous Bank Market after the late 19th Century in China
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19K13753
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
諸田 博昭 山形大学, 人文社会科学部, 准教授 (70785089)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金融市場の安定 / 内部貨幣の創出 / ギルド的規制と市場秩序 / 短資市場 / 外為市場 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の論文としては、Hiroaki Morota, “Chinese Currency Circulation and Credit Order in the Interwar Period ”, in Chi Cheung CHOI, Keng We KOH, and Tomoko SHIROYAMA (eds.), Strenuous Decades: Global Challenges and the Transformation of Chinese Societies in Modern Asia,: Mouton de Gruyter, March 21th 2022を出版することができた。この論文は、20世紀前半の中国における地域的な銀行券が、銀行券の普及と安定的な供給、恐慌の波及の防止に役立ったという側面を明らかにし、中国の貨幣統一と金融制度の近代化を結びつけた議論に一石を投じることを目的としたものである。 研究会報告としては、“Was the native interest rate good for financial stability? :Money creation, clearing system, and a growth of a modern banking sector in Shanghai in the early 20th century”, Money doctor’s Workshop, Zoom, 10th February 2022を行った。これは、中国籍の伝統的金融機関の同業間貸借利子率の変動の激しさが中国の金融の発展の安定化に如何なる影響を与えたかを明らかにすることを目的とするものである。「今後の研究の推進方策」でも示した通り、この成果は今後、上海外国為替市場との相関を調べることによって、更なる研究の進展が見込める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記した“Was the native interest rate good for financial stability? :Money creation, clearing system, and a growth of a modern banking sector in Shanghai in the early 20th century”, Money doctor’s Workshop, Zoom, 10th February 2022で示した成果は、当初の研究計画に沿うものであるからである。数ある貨幣や金融の分析に関連する統計や記述資料の中から、伝統的金融機関の同業間貸借利子率と貨幣の分業構造と貨幣鋳造の在り方の関係に焦点を絞り、この時期の中国金融の拡大と安定のバランスがどのようにとられていたのか、あるいはとられていなかったのかという問題に切り込むことができた。この成果は、これまでの研究成果を踏まえて、さらなる研究の段階に進むために重要なものとなると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、“Was the native interest rate good for financial stability? :Money creation, clearing system, and a growth of a modern banking sector in Shanghai in the early 20th century”, Money doctor’s Workshop, Zoom, 10th February 2022で示した成果をさらにブラッシュアップさせ、まずは今年7月にパリで開催されるWorld Economic History Congress 2022で研究報告を行い、世界で研究している経済史研究者から研究の進展のためのアドバイスをもらう。 第二に、その準備と併行して、上海における中国籍の伝統的金融機関の同業間貸借利子率の変動と外国為替の現物と先物の開きの推移の相関関係を調べることを計画している。上海外国為替は国際的な銀価格に追随しており、少なくとも20世紀以降に、中国第一の経済都市である上海は国際市場と統合が進んでいたということはよく知られているが、その実、先行研究のほとんどは、上海外国為替と世界の銀の価格差に応じた裁定取引の存在を指摘するに留まっている。それに対して本研究では、当時の日本の通商局の調査資料で言及されている中国籍の伝統的金融機関の同業間貸借利子率の変動と外国為替の現物と先物の開きの推移の強い相関に着目し、中国側から上海為替を変動させた動向について深く切り込んでいくことを考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行によって、学会報告や研究会報告などで海外出張に行くことがかなり困難になったことから、オンラインでの研究会報告が増えた。加えて、中国各地の檔案館が外国人に対して非開放政策をとり、中国での資料収集に行くことが減った。今年度は、以上のような理由で生じた余剰資金を、当時の新聞や雑誌などの歴史資料の購入にあてる予定である。このような歴史資料は高額で、1セットを購入すれば100万円を超えるものも少なくない。既に当時の上海で刊行されていた『申報』などの雑誌の購入を進めており、今後も研究の進展と必要に応じて順次買い足していく予定である。
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