2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13758
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
古賀 康士 九州大学, 附属図書館, 助教 (50552709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貨幣史 / 地域社会 / 在来金融 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の2019年度は、分析対象地域における資料調査を重点的に行うことを目指していた。対象地域の一つ岡山地域については、和気町の大規模史料群である大國家文書の現地調査を行い、岡山藩の藩札の実態解明を進めた。本調査の成果については、同じく日本貨幣史を対象とする科研プロジェクト(「日本における紙幣の発生と展開:17世紀の私札を中心に」研究代表・加藤慶一郎、課題番号16H03650)の論文集に成果の一部を寄稿することができた。 同じく主要対象地域である北部九州地域については、天草の豪商・石本家文書(九州大学附属図書館付設記録資料館所蔵)を中心に基礎史料の撮影を実施した。また本研究の課題の一つである北部九州の物価データベース作成については、安藤保編『近世天草における物価データベース』(福岡、2000年)のデータセットを得ることができた。これによって18世紀中期以降の長期的な時系列データを整備する基礎が得られた。 このほか、当初の予定にはなかったが、他の貨幣史関係の科研グループと連携を深めることができた点も実績としてあげておきたい。上述の「日本における紙幣の発生と展開:17世紀の私札を中心に」(研究代表・加藤慶一郎)では、今年度より新たに研究分担者となったことで、私札研究の最新の研究動向を採り入れることなどが可能となった。また、2019年12月には「東ユーラシアにおける貨幣考古学の確立を目指した考古学的研究」(研究代表・三宅俊彦、課題番号16H03512)がベトナム・ハティン省で実施した現地調査と研究会に参加することができた。これによって近世日本の貨幣システムの歴史的位置づけを国際的な視座から再検討することも可能となってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年1月以降に発生した新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行、および次年度の所属研究機関の変更が決定したことなどによって、2019年度は所定の研究計画の一部が実施できなかった。とりわけ年度末に予定していた国内での現地調査は、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の発生を受けて次年度以降への延期を余儀なくされた。 ただ、計画通りに現地調査が出来なかった点に関しては、入手困難な地方史関係の文献類の購入や、申請者が所属する研究機関の所蔵資料を重点的に調査することを通じて、可能な限り補うように努めた。こうした点をふまえ、現在までの達成度を「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度については、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行状況を見極めながら実施していくことになると予想される。国内・海外での資料調査・研究報告が困難な場合は、資料調査の対象を北部九州地域に絞り込むことで、代替的な調査成果が得られるように調整をしていきたい。 またこうした状況から、2020年度はデータ分析と成果の取りまとめに重点を移していきたい。石本家文書の物価データベースについては、安藤保編『近世天草における物価データベース』のデータセットを再検討しながら、対象となる経営帳簿やデータ系列の追加を進める。また研究成果の取りまとめについても、研究会・学会等の発表機会は減少すると考えられるが、それにかわって論考の執筆と学術誌等への投稿を積極的に進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2020年1月に発生した新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行などを受けて、国内の資料所蔵機関での現地調査が予定通りに実施できなかった。そのため、研究計画を部分的に変更し、旅費の一部を図書購入費や人件費(資料調査補助)として使用したが、若干の次年度使用額が発生した。これについては、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行状況を見極めながら、当初予定の旅費に充当するなどして、研究計画の遂行に支障がないよう柔軟に対応していきたい。
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