2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13758
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
古賀 康士 九州産業大学, 経済学部, 講師 (50552709)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貨幣史 / 地域社会 / 在来金融 / 制度的補完性 / 開発経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目の2020年度は、前年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の影響によって必要な国内調査を実施することが困難となった。そのため、新規の資料調査は福岡県内に所在する天草の豪商・石本家文書(九州大学附属図書館付設記録資料館所蔵)などの一部に止め、すでに撮影等によって収集していた資料の分析とその成果の発表に重点を移した。 主な研究実績としては、次の2点が挙げられる。一つは、瀬戸内海・島嶼部の塩飽諸島を対象として、貨幣システムと地域社会の関係を分析した論考を発表することができたことである(岩橋勝編『貨幣の統合と多様性のダイナミズム』晃洋書房、2021年所収)。近世の塩飽諸島は、「人名制」と呼ばれる独特の自治制度がとられており、この地域を分析することで、領主権力が介在しない形で生成される地域社会の貨幣秩序の実態を明らかにすることができた。なお、本論考はすでに基礎的な調査・分析を終えていたものだが、今回、本研究の分析視座から改稿を加えて発表することができた。 もう一つは、岡山藩札に関する論考の修正・改善を行うことができたことである。昨年度寄稿していた本論考は、論文集の刊行が延期となったため、2020年度内に公刊することはできなかったが、オンライン研究会の発表を通じて、内容を修正・改善する機会を得ることができた。本論考については、2021年度に公刊の予定である。 このほか、昨年度開始した石本家文書を用いた物価データの収集・分析や関連史料の翻刻作業なども継続して作業を進め、次年度以降の成稿化に向けた準備を整えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の国内における流行・蔓延状況が予想外に長期化したため、2020年度は分析対象地域における資料調査がほとんど実施することができなかった。また、新しい所属機関でのオンライン授業への対応など、コロナ禍のなかで想定外に多くのリソースが割かれることとなった。 本研究は、国内の資料所蔵機関における現地調査を中心としており、毎年の予算の多くも国内調査に要する旅費等から構成される。2020年度は現地調査が困難となったことなどから、予算の大半は執行せず、次年度に繰り越すことにした。 以上のように、2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行・蔓延状況によって、計画していた調査・研究を充分に遂行できなかった。こうした点を踏まえ、研究成果の発表は一部できたものの、本年度は現在までの進捗状況を「遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、2021年度も新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行・蔓延状況を見極めながら、本研究を進めていくことになる。流行・蔓延状況がさらに長期化する場合に備えて、石本家文書の調査・分析や関連史料の翻刻、論考の学術誌への投稿等を通じて、確実に本研究が推進できるよう努める。 なお、新型コロナウイルス感染症の流行・蔓延期には、県外への移動や資料所蔵機関の利用が制限されることが予想されることから、2021年度は感染症の収束期に合わせて必要な現地調査を実施することにしたい。また、コロナ禍によって研究計画の遂行が遅滞したことを踏まえ、次年度以降の研究期間の延長も考慮したい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行・蔓延状況が予想外に長期化したため、2020年度に計画をしていた国内の資料所蔵機関における調査や国際学会における研究報告が実施できなかった。そのため、2020年度の予算の支出は関連文献の購入に止め、次年度以降のコロナウイルス感染症の収束を期して、未使用額は繰り越すこととした。 2021年度は、新型コロナウイルス感染症の収束期を見計らって、可能な限り本研究に必要な国内調査を実施したい。また、2020年度にコロナ禍によって研究が遅滞したことを踏まえ、研究期間の延長も考慮したい。
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