2023 Fiscal Year Research-status Report
岐阜産地を事例とした戦後日本における地方型アパレル産業の形成と発展
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19K13761
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Research Institution | Chiba University of Commerce |
Principal Investigator |
小谷 健一郎 千葉商科大学, 商経学部, 講師 (10782188)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アパレル産業 / 縫製加工業 / 岐阜産地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、中小企業近代化政策における岐阜縫製業の対応について研究した。研究課題は、1960年代後半以降、日本有数のコモディティアパレル産地へと発展した岐阜産地において、どのように縫製業が組織化され、どのような事業展開を行い、なぜ縫製企業として組織能力を構築できたのかを明らかにすることを目的とした。 事例とした協業組合において、組合結成以前の各社は、個人経営で従業員は数名程度、取引先は岐阜の中堅アパレル企業1社に依存した典型的な岐阜の縫製企業であった。近隣に同業者が多数存在するなかで、組合に参加した経営者は、今後の企業としての生き残りに強い危機感を持っていた。こうしたことを背景に事例とした協業組合は設立された。 この協業組合は、零細家内工業から近代的な縫製企業へと転換するため、組織能力の構築を図った。第一には経営面への投資である。組合幹部は経営能力向上のため、各種研修会を受講し、縫製技術の指導を受けた。また、経営組織も営業、生産、技術といった職能別組織を構築した。第二は生産面への投資である。ミシンメーカー指導のもと、生産工程では自社一貫生産体制を構築し、大量で高品質な衣料品生産を可能とした。また、生産品目も、カジュアル衣料の縫製から高品質な縫製が要求されるフォーマルウェアに変更した。第三は販売面への投資である。組合設立以前は、岐阜のアパレル企業が主要取引先であったが、組合設立以後は、工賃の高い東京のアパレル企業が主要取引先となった。その後、事例とした協業組合は東北地方にも工場を建設し、1990年代は中国にも進出した。 このように本事例は、岐阜縫製業において、零細家内工業から近代的縫製企業へと経営発展した事例と位置づけられ、組織化し産地構造の変化に対応することで、岐阜産地を代表する縫製企業へと経営発展した原動力を組織能力の視点から明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒアリングや現地調査で当初計画から遅れが生じている影響で論文執筆が遅れており、総合的な評価としてやや遅れた状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、アパレル企業や縫製業、アパレル関連企業、業界団体等へのインタビューを実施したうえで、研究成果を日本流通学会等で発表し、論文化する計画である。
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Causes of Carryover |
インタビュー等の現地調査の未実施分があったため、予算未執行額が生じた。2024年度は計画的にインタビュー等の現地調査を実施する。
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