2019 Fiscal Year Research-status Report
Economic reconstruction of Hiroshima city: an analysis of economic statistics, 1945-1965
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19K13762
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
西崎 純代 立命館大学, 国際関係学部, 助教 (30802110)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 戦後復興 / 経済復興 / 経済成長 / 広島 / 原子爆弾 / 戦災 / 移行経済 / 経済史 |
Outline of Annual Research Achievements |
原爆で壊滅的な被害を被った広島市は、戦後、造船業や自動車工業に牽引されて経済復興を果たした。しかし重工業の生産が回復していくのは1950年代に入ってからのことである。それ以前、原爆投下後の1945年から1950年代に入るまでの経済復興のプロセスは驚くほど知られていない。本研究の目的は広島市の経済統計の整理と分析を通し (1) 広島市の経済復興はどの分野から始まり、(2) 何が復興を牽引したのか、(3) 経済復興の推進力は、時とともにどのように変化したのかを、経済史の文脈で解明することである。 本研究一年目となる2019年度の研究成果は以下の通りである。まず、広島県の戦後の引揚者の職業体験に関する論文を、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)から、ワーキングペーパーとして発表した。研究発表は、2019年5月に北海道大学のThe Modern Japanese Studies Programでの招聘講演を、また第88回社会経済史学会 全国大会において研究報告を行った。そして、LSEから2017年に博士号を取得し、広島を重要なケーススタディとして扱った論文「After Empire Comes Home: Economic Experiences of Japanese Civilian Repatriates, 1945-56」の概要が、Economic History Society of Australia and New Zealand主催の「Asia-Pacific Prize」の選考にファイナリストとしてノミネートされている(2019年11月、結果発表は2020年夏)。同論文はAustralian Economic History Review 2020年7月号に掲載される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の計画は、①1930年から1965年までの広島市のマクロ経済データの入手と整理、②広島県および広島市が発行した経済状況に関する資料、日本銀行広島支店の「金融経済月報」、広島県商工会議所作成の資料、中国新聞記事、社史などの収集、であった。①のマクロ経済データ収集は、順調に行った。しかし、日本銀行資料と社史の収集は2020年3月上旬を予定していたため、コロナウィルス感染に伴う出張自粛と重なり、2020年度に行うことに計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、かねてから予定していた広島市の経済復興の分析に入る。2019年度から繰り越しとなった、日本銀行広島支店の「金融経済月報」、広島市の企業の社史の収集も行っていく。そして、来年度2021年度には研究成果の発表を本格的に開始する予定である。 2020年度に行う経済復興の分析では、1945年から1948年、1949年から1955年、1956年から1965年の三期間に分け、先述の通り (1) 広島市の経済復興はどの分野から始まり 、(2) 何が復興を牽引したのか 、(3) 経済復興の推進力は、時とともに、どのように変化したのかを明らかにする。上記、(2)と(3)に関しては、①設備投資の役割、②人々の教育水準(人的資本)、③政策の実効性、④技術導入によるキャッチアップ効果、⑤社会の潜在能力(social capability)、⑥輸出の貢献度、⑦国内・国際競争が企業行動に与えた影響を検討し、ヨーロッパの戦後復興研究との比較も行う。ただし、主眼は広島市の経済復興過程に置き、海外の事例は参考として使用する。
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Causes of Carryover |
2020年3月にボストンで開催予定だった The Association for Asian Studies 年次総会が、新型コロナウィルスの感染拡大により中止になり、旅費に未使用額が生じた。今年度は、同学会は2021年3月にシアトルで開催されることになっており、未使用額を旅費として使用予定である。
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