2019 Fiscal Year Research-status Report
戦間期フランス北部炭鉱業と外国人労働者の経営史的研究
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19K13763
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
杉生 博子 (定藤) 鹿児島国際大学, 経済学部, 講師 (40804282)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経営史 / 移民史 / フランス / 炭鉱 / ポーランド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、外国人労働者の労働条件や生活実態の考察を通して、産業発展と労働力の再生産の関係を明らかにすることである。そのために、両大戦間期フランス北部炭鉱業を事例に、炭鉱業の発展や労働環境に与える外国人労働力導入の影響を考察する。特に、当時組織的に雇用されたポーランド人労働者に焦点を当てる。 具体的な計画としては、炭鉱の内部資料や労働者の個票のデータベース化とその数量的分析を進める。①資料収集、②データベース作成、③分析、④研究成果の発表とした。本年は、これらを同時並行で行った。昨年度までの研究を発展的に継続しているからである。①計画通り2度の渡仏で収集作業を実施した。しかし、一部、資料所収形態の変更等諸問題が発生した。これについては②と合わせて、進捗状況にて報告する。③これまでにデータベース化したデータの分析、考察を行い、④Congres International d'Histoire des Entreprises en FranceとInternational Conference “Technological Changes and Society”という国際学会での発表を行ったほか、論文にて報告した。 上記の作業を通じて、国籍を理由とした給与の支払いは行われていなかったこと、大恐慌期の石炭減産への対応として、労働者全体ではフランス人よりポーランド人の出勤日が減らされる一方、採炭量の調整に直結する坑内労働者の解雇はフランス人を中心に行われたことが判明した。つまり、フランス人坑内労働者は解雇された一方、ポーランド人坑内労働者は解雇されず、その代わり出勤日数が削減されたのである。労働日数、職種、解雇については労働者の熟練や採炭技術の変化もあわせて考察する必要があるため、この点については今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
データベース化し、分析を進める予定であった個票データの所収形態が変更された。これにより、給与データ等の収集が困難になった。そこで、他の資料館に存在する個票データ収集の可能性を探っているが、入手には至っていない。これに伴い、分析数の変更も余儀なくされている。個票データ収集のため、2019年度中に3度目の渡仏を行う予定であった。しかし、2020年初頭より、新型コロナウイルスの流行があり、渡仏が困難な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
資料収集が行えないことが研究遂行における最大の問題であるが、新型コロナウイルスの流行により、渡仏は中長期的に困難であると想定される。よって、今後は、すでに入手した資料の分析を行う。これを日本等他国の状況と比較し、当初の目的ある産業発展と労働条件の変化について、考察を進める。
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Causes of Carryover |
資料館での資料所収形態が変更され、予定していた資料収集ができなかった。これに伴い、データ入力等の作業も不要となった。また、資料調査の為、2020年2月から3月に渡仏予定であった。しかし、新型コロナウイルス流行の為、予定していた渡仏ができず、使用計画と大きな差額が生じた。 今年度は渡仏可能になり次第、2度の渡仏を行い、資料収集を行いたい。同時に、データ分析も行う。そのため、インターネットを通して現地からの資料の入手に対応した機器備品類、分析のためのソフト、研究関連書籍の購入を行う予定である。
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