2019 Fiscal Year Research-status Report
Sharing economy and nonmarket strategy processes
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19K13770
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
遠藤 貴宏 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (20649321)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ライドシェア / プラットフォームエコノミー / ディスコース / 非市場戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ライドシェアに関する非市場戦略について、二次データを中心に収集および分析を行った。ライドシェアに関してどのような観点から推進・反対するプレーヤーが存在するのかについて、整理を行った。この整理を行う上で、組織分析を行う際に利用されることの多い、既存参入者(incumbents)と挑戦者(challeners)という区分は有用であった。既存参入者としては、タクシー会社およびその業界団体が代表的なものであった。挑戦者は、ライドシェアを提供する企業に加えて、関連する業界団体であった。既存参入者は総じて、ライドシェアに対して反対の立場をとってきており、挑戦者はライドシェアの推進を求めてきた。
分析を行う上では、どのような意味付けを行ってきたのかという点を理解する際に援用されることの多い、ディスコース(discourse)および、経営者団体(employers' association)の役割に注目することが有用であるという見通しを持っている。ディスコースは、同じ問題に対して、異なる意味付けが生じ得るという点を深く分析していく上で貴重な視点を提供してくれる。例えば、ライドシェアで働く人々は、いわゆる雇用者として位置付けられるのか否かという点を巡っては、既存参入者と挑戦者の間で全く異なる意味づけが行われていることが既に浮かび上がってきている。この点を、ディスコースという観点からさらに深めていく。また、経営者団体の役割は、組織・経営の領域で、あまり理論化が進んで来なかったものの、本研究においては極めて重要な視点を提供してくれる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ライドシェアを扱う本研究に関して、2019年度に注力してきたのは以下の2つの事項である: 第一に、二次データを収集する 第二に、主たるプレーヤーの役割を概念化することを始めとして、分析フレームをある程度固める この点から2019年度の研究活動を振り返ると、二次データの収集は既に終了している(新聞記事に関しては、データベースを利用して、関連するキーワードを用いて、記事を収集した。また、国会議事録に関しても同様に、ライドシェアを主たるキーワードとして、関連する議事録について収集を行った)。また、分析フレームに関しても、目処が立っている。したがって非常に順調に進んできたといえる。
また、ワーキングペーパーとして、二次データに関する分析内容を、ワーキングペーパーとしてまとめ始めた。だが、それは未完である。ワーキングペーパーの執筆開始は、当初の計画よりも早いものである。しかし、完成まではあと数ヶ月を要する。そのため、当初の計画を大幅に超えるような進捗は実現していないものの、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究活動を基盤として、二次データの分析をさらに深めていくことに加えて、関係者に対して聞き取り調査を実施していくことが当初の計画であった。
ただし、Covid-19により当初の想定からは計画をかなり変えなければならない可能性が出てきた。大きく分けて2つの可能性がある。第一に、当初の想定よりもかなり数を減らすものの、飽くまで関係者との直接のコンタクトを重視するという方向である。この場合、通信技術を活用してインタビューを行うことになる。この選択肢の最大の問題点は、非市場戦略の実施という、極めてセンシティブなトピックに関して質問をするため、直接面会することなくインタビューを実施することで十分かどうかということである。第二の可能性としては、二次データを中心に据えて、ライドシェアに関連した事項を包括的に扱っていくという、いわゆる拡張事例研究法(extended case method)というアプローチを採用することである。これら2つの可能性を考慮した上で、情勢を見極めながら判断していく予定である。
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