2021 Fiscal Year Research-status Report
創造的な人的販売活動を促進および阻害する組織的要因について
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19K13771
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
石塚 千賀子 新潟大学, 人文社会科学系, 特任助教 (70812436)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 快楽的ブランド / 功利的ブランド / 顧客エンゲージメント / 創造性 / ブランド体験 / 主観的幸福感 / デジタルトランスフォーメーション / 組織の変革 |
Outline of Annual Research Achievements |
創造的な販売員の介在で、ラグジュアリー・ブランド(企業)に対する顧客のエンゲージメントが維持されることが本研究の前段階でわかっている。一方、エンゲージメントの先行要因や結果については、先行研究が蓄積されているが、エンゲージメントの維持や強化の要因について着目した研究は少なく、十分議論されていない。また、創造的な販売員の中核的な行動特性とエンゲージメント形成の関連も十分にわかっていない。 2021年度は、前述の問題意識に基づき、前年度までに収集した調査データを分析し、ブランドへの顧客のエンゲージメントの発生と維持の要因を明らかにした。エンゲージメントは、ラグジュアリーブランドのような快楽的ブランドだけではなく、功利的なブランドにも見られている。異なる性質をもつブランドでの顧客エンゲージメントが生まれ維持される要因を特定し、両者で比較した。その結果、主義が異なっても通底する消費者の欲求が確認された。結果は論文にまとめ、2022年4月時点で査読付き海外ジャーナルへの掲載が決定している。 また、COVID-19による行動規制と、店舗のクローズや販売員のモチベーションなどに鑑み、販売業以外の業態にも目を向け、創造的な企業活動・組織に着目した。その結果、デジタル・サービス化を活用しデジタルトランスフォーメーションを実現している企業を調査するに至った。その結果、多くの企業が直面し、挫折するDXのパラドクスを乗り越える鍵は、経営者の意思決定および組織づくり・変革のプロセスにあることが示された。組織的にDXを推進し、そのパラドクスの乗り越えを可能にする要因をプロセスと要素のマトリクスに落とし込み提示した。この結果はケース論文として日本マーケティング・ジャーナルで発表した。また、蔵元のファンづくりの取りくみを調査し、既存の価値提供型ではない価値創造に寄与する創造的な取り組みを紀要で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID-19下の行動制限により、当初の計画通りの量のインタビュー調査が進んでいない。しかしながら、その分、収集済みのデータを丁寧に分析し読み解くことや、先行研究の洗い直し、および論文の執筆などに時間を費やした。 同様に、販売業へのアプローチが難しい時期があり、そのため、組織や個人の創造性を阻害する要因について、業態を超えて調査した。その結果、創造的な経営を実践する経営者に着目することにつながった。そこでは、学術的にも実務的にも注目されているデジタルトランスフォーメーションを成功させており、DXの実走においても、組織的なことが、阻害要因も、パラドクスを乗り越える成功の鍵も握ることが示された。 これらの内容はケース論文として発表し、結果として、計画通りの量の調査が出来ていないが、より少数の調査対象について、深く丁寧に調査を進め洞察を深めてアウトプットできている点でおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究については、最終年度であることに鑑み、以下の2点について論文にまとめ査読付きジャーナルに投稿する。 1)リアルなカスタマージャーニーにおいて、消費者の再来店意向に値する、創造的な人的販売要素を明らかにする。先行研究のまとめと調査は済んでいるので、結果を論文投稿を行う。 2)創造性を阻害する組織的な要素について、企業の体制が変わっても創造性を発揮し業績を伸ばすことができているプレイング・マネージャー、および、異なるブランド企業でも、創造性を発揮し、業績を伸ばしているプレイングマネー・ジャーのデプス・インタビュー調査を引き続き行い、創造的な行動を促進・阻害する要素を明らかにする。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響により、予定していたインタビュー調査を延期したことにより次年度使用額が生じた。残額は2022年度において調査を再開し、また今までまとめていたものを仕上げ、海外ジャーナル投稿のための英文校正費用およびオープンアクセスジャーナルの掲載料等で使用することを計画している。
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