2019 Fiscal Year Research-status Report
Maximization of Shareholder Value and the transformation of corporate governance
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19K13772
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
柴田 努 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (80632033)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 株主価値 / 企業法制の規制緩和 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、機関投資家への株式集中後も経営者支配の構造が続いていることを明らかにするために、アメリカと日本における株主配分増加の要因を経済の金融化を背景とした規制緩和との関連で分析を進めている。 そのための作業として、(1)経営者支配と経済の金融化の理論的分析、(2)株主配分の増加を企業法制の規制緩和の影響から考察することの二点を重視している。 2019年度は、特に(2)の点について、2013年以降に本格化する日本におけるコーポレート・ガバナンス改革の分析を行った。具体的には、「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(2013年8月6日第1回~2014年2月26日第6回)、「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」(2014年8月7日第1回~2015年3月5日第9回)、「法制審議会―会社法制部会」(2010年4月28日第1回~2012年8月1日第24回)、「法制審議会-会社法制(企業統治等関係)部会」(2017年4月26日第1回~2019年1月16日第19回)、「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(2015年9月24日第1回~2019年4月10日第19回)、「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(2019年10月2日第1回~2019年12月11日第3回)の議事録からコーポレート・ガバナンス改革の目的と特徴を分析した。そしてそれを踏まえて会社法改正やコーポレートガバナンス・コード、スチュワードシップ・コードの策定が企業行動にどのような影響を与えているのかを分析した。以上の研究から、日本におけるコーポレート・ガバナンス改革は、経営者権限の拡大が生じているにも関わらず、機関投資家による企業経営に対する直接的影響力は極めて限定的であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画では、(1) 「経営者支配論の再評価」 (2) 「機関投資家支配論の批判的検討」(3) 「アメリカにおける株主配分増加の背景―経済の金融化と規制緩和との関りで―」 (4) 「日本における株主配分増加の背景―経済の金融化と規制緩和との関りで―」の四点を挙げたが、このうち(4)については、経済理論学会で報告を行い、論文として発表できる水準まで進めることができた。また、(1)に関して、バーリ・ミーンズ理論の海外の研究動向についての作業も始めている。よって、自己評価として「2」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、研究実施計画の(1) 「経営者支配論の再評価」についての研究をさらに進めるとともに、 (2) 「機関投資家支配論の批判的検討」と(3) 「アメリカにおける株主配分増加の背景―経済の金融化と規制緩和との関りで―」について進めていく。そして、2019年度の成果である日本におけるコーポレート・ガバナンス改革の研究も含めて、その成果を研究書として出版する予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施計画に基づいて研究費を執行したが、海外の専門文献を購入するための概算と実際の執行額の差から未使用額が生じた。次年度も研究実施計画に基づいて、必要な文献の購入に使用する予定である。
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