2019 Fiscal Year Research-status Report
ドイツとの比較から考察する日本の企業統治改革の課題
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19K13775
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山口 尚美 香川大学, 経済学部, 講師 (70837509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 株式会社論 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本で現在進行している株主利益偏重的な企業統治改革について、その理論的妥当性を株式会社論の観点から検討するという点を目的の一つに掲げた。その際、代表的な先行研究として、岩井克人氏による株主主権論への批判(『会社はだれのものか』平凡社,2005年ほか)を挙げた。令和元年度に行った下記の学会発表では、岩井氏の所論に内在する問題として、①株式会社の固有性や社会的機能にかかる議論が欠如している点、②現行法に対する批判的視点がなく、現行法の枠を超えた社会規範が考慮されていない点を指摘している。 山口尚美「株式会社論から見る企業統治問題:岩井克人氏の所論に対する批判的吟味から」日本比較経営研究学会第44回全国大会、於・徳島文理大学、2019年5月11日、予稿集38-40頁。本学会発表の成果は、令和2年度に執筆する予定である論文の基礎となる。当該論文は、法人論争を単に法人という法的属性の問題と捉えるのではなく、株式会社の現代的機能から捉えなおすことによって、現行の企業統治改革の問題を考察する趣旨のものである。 また、令和元年度から現在まで、株主利益偏重的な企業統治のあり方について、その方法的基礎と問題点を明らかにするため、新制度経済学における「合理性」概念とはいかなるものかを研究している。 本研究では、いま一つの目的として、アンケート調査およびインタビュー調査によって、これまでの実証研究を一次資料によって補強し、株主主権観が実態としてどの程度、日本企業の経営者に受け入れられているかを調査することを掲げた。令和元年度から現在まで、今後実施する予定のアンケート調査の質問項目の作成を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度には、代表的な先行研究である岩井克人氏の所論について批判的に吟味し、おおむね論文執筆の基礎が固まった。また、アンケート票の作成も順調に進んでいる。学説研究と実証研究、ともに順調に下地を固めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度の研究では、法人論争を株式会社論の視点から再考することを通じて、現行の企業統治改革の問題をあぶり出す。その際、ドイツでワイマール時代より会社法をめぐって展開されてきた企業自体論と呼ばれる独自の株式会社論に注目する。 なお、当初の計画と若干異なる点として、今後の研究では、企業統治のみならず企業倫理にも着目する必要が生じた。ドイツでは、「株主の私的所有物」ではなく「公共物」としての大企業の性格を特定することから、公共の利益の視点から企業統治の議論が進展している。しかし、ドイツでも公共の利益を阻害するような企業不祥事が多発している事態を受け、企業統治を補完するものとしての企業倫理について考察することが必要不可欠であるとする考えに至った。このため、令和3年度の研究では、第1に、企業倫理研究の基礎となる方法論を、科学哲学者ポパーの批判的合理主義を批判的に吟味することから明らかにする。第2に、株主利益偏重的な企業統治のあり方について、その方法的基礎と問題点を明らかにするため、新制度経済学における「合理性」概念とはいかなるものかを明らかにする。 令和4年度には、アンケート調査・インタビュー調査を実施し、企業統治改革の方向と日本企業の実態との距離を明らかにする。
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Causes of Carryover |
米ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」の見直しを宣言したという、日本の企業統治改革に今後大きな影響を与えうる出来事が起きたことから、当初は研究期間の前半に行う予定であった実証研究を後半に位置づけ直した。そのため令和元年度には、アンケート調査・インタビュー調査に必要な研究経費を使うことがなかった。 このため、未使用額は今後のアンケート調査・インタビュー調査の経費に充てることにしたい。
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Research Products
(1 results)