2020 Fiscal Year Research-status Report
ドイツとの比較から考察する日本の企業統治改革の課題
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19K13775
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
山口 尚美 香川大学, 経済学部, 准教授 (70837509)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | コーポレート・ガバナンス / 株式会社論 / 株式会社の公共性 / ESG投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、現行の日本の株主利益偏重的な企業統治改革について、その理論的妥当性を株式会社論の観点から批判的に検討するという目的を掲げている。 これについて、令和2年度の研究では、岩井克人氏の所論(岩井克人『会社はこれからどうなるのか』平凡社,2009年ほか)を取り上げ、株主主権論への批判それ自体には賛同しつつも、株式会社制度の固有性・社会的機能を無視している点を指摘し、①現代株式会社の経営者の役割とは何か、②株主主権論の問題とは何か、③株式会社の「公共性」とは何か、といった点を明らかにし、企業統治をめぐる現行会社法の限界を指摘した。(山口尚美「岩井克人(2009)『会社はこれからどうなるのか』平凡社:株式会社論からの批判的考察」香川大学経済論叢,2020年9月。) また、ESG投資が急速に拡大している現状に鑑み、環境問題に対して、機関投資家や機関投資家と連携するNGOsがどのような企業統治を展開しているかを著した。(山口尚美「環境問題と現代企業」,佐久間信夫編著『改訂版 経営学原理』創成社,2021年3月,第5章96-114頁。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度には、代表的な先行研究である岩井克人氏の所論への検討を通して、現行の日本の企業統治改革の理論的妥当性を批判的に吟味し、企業統治の問題を株式会社論の視点から考察する必要性を論文に示した。これは、本研究の1つの目的であった。 また、令和4年度に行う予定のアンケート調査について、質問票の作成をはじめ、順調に作業が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画と異なる点として、今後の研究では、企業統治のみならず企業倫理にも着目する必要が生じた。ドイツでは、「株主の私的所有物」ではなく「公共物」としての大企業の性格を特定することから、公共の利益の視点から企業統治の議論が進展している。しかし、ドイツでも公共の利益を阻害するような企業不祥事が多発している事態を受け、企業統治を補完するものとしての企業倫理について考察することが必要不可欠であるとする考えに至った。 このため、令和3年度の研究では、第1に、企業倫理の方法を日独比較の視点から明らかにする。第2に、株主利益偏重的な企業統治のあり方について、その方法的基礎と問題点を明らかにするため、新制度経済学における「合理性」概念とはいかなるものかを明らかにする。また、次年度にまたがる可能性があるが、第3に、企業倫理研究の基礎となる方法論を、科学哲学者ポパーの批判的合理主義を批判的に吟味することから明らかにする。 令和4年度には、アンケート調査・インタビュー調査を実施し、企業統治改革の方向と日本企業の実態との距離を明らかにする。
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Causes of Carryover |
ここ数年に日本の企業統治をめぐる制度改革が大きく進んだこと、米ビジネス・ラウンドテーブルが「株主第一主義」の見直しを宣言したこと、コロナウィルス感染拡大による企業への影響などに鑑み、企業統治の実態を明らかにするためのアンケート調査の時期を、当初の予定から変更し、研究期間の後半に位置づけ直した。そのため、アンケート調査に必要な研究経費を現段階ではまだ消化していない。これまでの期間に生じた未使用額は、今後のアンケート調査の経費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)