2021 Fiscal Year Research-status Report
New Organization Design for Innovation
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19K13782
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
岩尾 俊兵 慶應義塾大学, 商学部(三田), 専任講師 (50823895)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イノベーション / 組織構造 / 組織設計 / サプライヤーシステム / カイゼン / シェアリングエコノミー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において、イノベーションの発生に対する組織の「形」と「広さ」の影響についての研究成果を学術論文や一般記事、書籍等の多様な媒体に幅広く公開することができた。具体的には、イノベーション「そのもの」の動きをコンピュータ・シミュレーション等を用いて把握し、イノベーションに必要な資源とアイデアの流れを管理するという「イノベーションそれ自体のマネジメント」への足掛かりを築いた。ここでいう「イノベーションそれ自体のマネジメント」はイノベーションとイノベーションの種(アイデアと資源)とが社会における人のつながり(ネットワーク)を通して伝播していく様子をモデル化したものであり、これによって、イノベーション創出のためにどのような人材をどのようなネットワークで繋げばよいのかという新たな知見を得ることができるという意義があった。これは、イノベーション創出に有効な社会・組織・制度を考える基礎となりえ、イノベーション創出の必要性が叫ばれる昨今にあって重要性が増している研究内容であると考える。今回の研究活動で得られた知見の一部として、資源とアイデア(情報)の渋滞の解消という視点から、梁山泊型、高信頼フィクサー型、リーンスタートアップ型、起業サークル型、科学者集団型、ムラ社会型などの制度の有効性をコンピュータ・シミュレーションによって検証し、これらの社会ネットワークにはそれぞれ異なった特徴があることが判明した。こうした特徴の中には、小さなイノベーション(悪貨)が大きなイノベーション(良貨)を駆逐する「イノベーションのグレシャムの法則」、世間知らずが大きなイノベーションに寄与する「井の中の蛙の効用」などがあった。さらに、実証研究と仮想実験の混合研究によって、イノベーション同士の連鎖という現象も発見され、イノベーションの連鎖を育てるためのマネジメント手法としての組織設計という新たな観点が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の影響もあり、対面での調査はほぼ不可能となり、さらに、対面での学会発表も不可能となった。そのため、本来であれば当初の計画よりも研究が遅れる可能性があった。しかし、こうした状況はむしろ研究成果を論文化するための時間が多く確保できるという良い結果も生んだ。これによって、少なくとも論文や書籍等の発表という観点からは、当初の計画以上に研究が進展することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、コンピュータ・シミュレーションをより広く活用しながら、同時に実証研究との混合研究やマルチメソッドをより意識した研究をおこなう。そのために、データの入手、分析、コンピュータ・シミュレーションでの再現や論文化などの、複数の研究プロセスにおいて、研究分担者・共同研究者を募る予定である。実際に、現段階でもすでにいくつかの共同研究プロジェクトが動き出している。また、データ活用の利点を企業に説明し、企業との社会実証実験的な共同研究も開始している。
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Causes of Carryover |
今年度と来年度は研究発表に重点をおく計画であった。この計画自体は順調であるが、海外渡航を伴う学会発表および論文発表を当初予定していたものの、新型コロナ感染症の影響でこうした活動に制限が加えられた。その結果、旅費が大幅に減少した。
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