2019 Fiscal Year Research-status Report
組織的不正の構築主義的アプローチに関する理論的・経験的検討
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19K13788
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
中原 翔 大阪産業大学, 経営学部, 准教授 (50780681)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織的不正 / 制度派組織論 / 違法市場研究 / 燃費不正 / 不祥事 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、組織的不正(organizational wrongdoing)がなぜなくならないのかを理論的・経験的に明らかにすることである。この目的に際して、本研究では制度派組織論や違法市場研究の知見を活用し、組織的不正が誘発される実態を明らかにした。具体的には、本研究の実施計画にあるように、組織的不正研究の理論的検討と経験的検討を行った。理論的検討としては、組織的不正研究を制度派組織論に根ざしながら展開するパルマー(D. Palmer)の研究に着目し、彼が「制度が組織的不正を誘発する」と言及する理論的根拠を明らかにした。その上で、わが国において「制度が組織的不正を誘発する」際に、どのような研究課題を設定すべきかについても理論的検討を行った。また、経験的検討ではわが国における燃費不正事例を取り上げ、三菱自動車とスズキの両事例ではどのように制度が燃費不正を誘発したのかを経験的データを用いながら論証した。ここでの「制度」とは、わが国の燃費測定において参照されていた燃費試験基準(JC08モード)である。結論を端的に述べれば、次の3点にまとめることができる。第1に、両事例は三菱自動車が高速惰行法を、スズキが走行抵抗値の積上げという測定方法を行っており、それが国内の基準から逸脱することによって燃費不正が行われていた。第2に、しかしながら両社がこのような測定方法を用いたのは、国内の惰行法が現場の実践とかなり乖離しており、非現実的な測定方法となっていたからであった。第3に、このことを踏まえて両事例を仔細に確認してみると、両社は海外の燃費試験基準を参考に、実質的に燃費を担保するかたちで測定を行っていたことが分かった。以上より、国内の燃費試験基準が誘発していた側面と海外の燃費試験基準が誘発していた側面の2つが確認できた。以上の成果は、日本情報経営学会誌に査読付き論文として掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究実施計画にある理論的検討(第一の計画)及び経験的検討(第二の計画)を実施済であるため、おおむね順調に進展していると判断した。なお、第三の計画である研究成果の公表に際しては、現在、研究の国際化の一環として英語書籍の刊行を予定しており、現在執筆が完了し、校正中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は本研究期間の最終年度となるため、積極的に研究成果を公表していきたいと考えている。また、公刊予定である査読付き論文をもとに、実際に三菱自動車とスズキへの調査も検討したいと考えている。両事例は、これまで同様の燃費不正として報道され続けていたが、その内実を見ると単に両社に責任を追わせる事例ではない。このことは、研究代表者が積極的に両社へアプローチし、当時の背景や内情を踏まえた上で論文を執筆したり、学会報告を行うことで、それが社会的に意義のある研究になると考えている。このように研究成果を社会的に還元することを念頭に、今後研究活動を推進していきたい。
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Causes of Carryover |
当該助成金が生じた状況としては、必要であると考えていた書籍の購入が見送られたためである。なお、本助成金の使用計画としては引き続き書籍の購入に充てることとする。
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