2019 Fiscal Year Research-status Report
自然災害からの中小企業の復興プロセスと事業承継計画に関する研究
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19K13791
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Research Institution | Fukuyama Heisei University |
Principal Investigator |
堀越 昌和 福山平成大学, 経営学部, 准教授 (00723777)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 西日本豪雨 / BCP / 事業承継 / 経営者の健康 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年のわが国では、自然災害等の突発的なリスクが頻発している。こうした状況下、後継者不在と経営者の高齢化が進展する中小企業の一部は、被災を契機に廃業を余儀なくされている。先行研究においてはこれまで、BCPを中心とした事業継続への取り組みと、後継者問題に対処する取り組みは、個別に論じられてきたが、長期的な事業継続のマネジメントを進めていく上で、両者を切り離して論じることは難しいと思われる。 以上の問題意識を背景に、西日本豪雨の被災地中小企業を対象としたアンケート調査とインタビュー調査を通じて、リーダー不在の事態への対処等、自然災害からの復興プロセスにおける「事業承継計画」の有効性と、その活用の促進に向けた課題を明らかにすることが、本研究の課題であった。 この課題を達成するために、2019年度においては、西日本豪雨で甚大な被害を被った広島県と岡山県の中小企業3,500社を対象にアンケート調査を実施し、672社から有効回答を得た。その結果、次のような実態が明らかになった。まず、「BCP(事業継続計画)」と「事業承継計画」の策定率、リーダー不在時の代替措置を講じている企業の割合がいずれも低いこと、他方で、経営者の高齢化は顕著で、後継者不在率は高く、発災時後の復旧対応に中心的な役割を担ったのは経営者であった。次いで、復旧に際しての自己効力感や復興への貢献意欲の昂進もあって、事業継続意欲が高まり、経営者の引退希望時期もわずかながら遅延することになった。ところが、労働時間の長期化、気力の減退や健康状態に悪化が見られるなど、災害からの復旧復興プロセスを乗り切るためには、高齢化が進む、経営者の遣り甲斐やモチベーションはむしろ、リスクとなりうることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、2019年度は概ね順調に推移したが、当該報告書作成時点においては、新型コロナウィルス感染症の影響により、著しい変更を余儀なくされている。具体的には、2020年度は、アンケート調査の回答者に対して、対面によるインタビュー調査を実施する計画であった。ところが、上述の影響により、移動や接触が制限され、(流行以前の段階で)協力の応諾を得た企業も「それどころではない」状況に陥っている。こうした事態に対処するため、SkypeやZoom等オンラインによるインタビュー調査を検討している所である。ただし、そもそも企業とは一面識もなく、緊急事態下にある企業への配慮から、当面の間、こうした代替的な方法であっても、研究課題を進めていくことは難しい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アンケート回答者のうち40社対象としたインタビュー調査を実施していく。その上で、アンケート調査とインタビュー調査の成果を総括し、「リーダー不在の事態への対処等、自然災害からの復興プロセスにおける「事業承継計画」の有効性と、その活用の促進に向けた課題」を考察する。研究遂行上の課題は「現在までの進捗状況」で叙述した通り、新型コロナウィルス感染症の影響により、対面によるインタビュー調査が実質的に不可能になっていること、また、この問題に対処するため、SkypeやZoom等オンラインによるインタビュー調査を検討しているが、緊急事態下にある企業への配慮等から、当面の間、こうした代替的な方法であっても、研究課題を進めていくことは難しい状況にある。
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