2019 Fiscal Year Research-status Report
Resource Procurement Model of the Managers of Social Business and Community Business in disadvantaged areas
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19K13795
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
中尾 公一 兵庫県立大学, 国際商経学部, 准教授 (60807098)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 条件不利地域 / ソーシャル・ビジネス / コミュニティ・ビジネス / ブリコラージュ / エフェクチュエーション / 過疎 / 起業 / 資源 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は総務省の「条件不利地域」関連法適用地域で活動する、ソーシャル・ビジネス/コミュニティ・ビジネス(SB/CB)の起業家・経営者やその資源提供者に対する訪問調査を、文献調査とともに定性的に分析し、SB/CB経営者の資源調達に際する、コーゼーション(将来の不確実性を極力少なくし、目的をたてその実現方法を逆算して考えること)、ブリコラージュ(即興で何とかすること)やエフェクチュエーション(将来の不確実性を受け入れ、関係者と実行可能な手段を探ること)等の、思考・行動様式を解明しようとするものである。 今年度は、①SB/CB経営者に関するデータベース(DB)の作成と分析、②先行研究調査、③訪問パイロット調査、④高等教育との関係に関する調査と研究発表を行った。 DBの調査分析は、条件不利地域のNPO法人の定款と財務状況の分析を行った。定款分析では、全国の条件不利地域のSB/CBの経営者がどのような思いで起業したかの分析に加え、地域活性とNPOの関連の先行研究調査を加味して論文執筆を行った。財務状況のDB分析については、全国の条件不利地域のNPOの収入源のDBを作成し、その研究成果を国際学会で発表した。 訪問パイロット調査については、上記のDB作成等を経て調査対象を絞り込み、全国10カ所以上の条件不利地域のNPO法人幹部に対して調査を実施した。途中経過であるが、研究成果を国内の学会で発表した。 また日本の大学・大学院でのSB/CBの関連講義のシラバス分析を行い、海外誌にて研究発表を行った。さらに上記の訪問調査の途中経過とも関連させ、SB/CB経営者の実務上の思考・行動様式と高等教育との教育内容の異同点についての研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画では、①条件不利地域のSB/CBのデータベース(DB)構築、②先行研究調査と重要概念抽出、③パイロット調査の実施と成果発表を行うこととしていた。下記の状況から「おおむね順調に進展している」といえる。 まず総務省の「条件不利地域」関連法適用地域で、「農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動」を活動分野とするNPO法人の財務状況DBを作成した。同時に村落部のNPOに関する先行研究調査を行い、その分析結果を国際学会で発表した。現在、国際学会で海外研究者から得た助言を元にデータ分析を重ねている。 また全国で地域活性化を謳うNPO法人の定款のDBを作成し、その分析結果を学会発表した。さらに地域活性化とNPOに関する研究誌の創刊時から現在に至るまでの先行研究DBを作成し、上記の学会発表の内容に加味して、査読付論文を執筆(2020年4月発行)した。 訪問パイロット調査は上記の3つのDBを元に、「条件不利地域」関連法適用地域で、年間1,000万円以上の経常収益を2年以上連続して得ている、全国の10以上の条件不利地域のNPO法人幹部に対して行った調査の途中経過を学会発表した。なお、上記調査先は初めて知己を得た法人が多く、調査先との関係構築を重視し、調査先への過度の負担を避ける観点から、NPO法人の資源提供者に対する聞取調査は限定的となものとした。 また日本の大学・大学院でのSB/CBの関連講義のシラバス分析を行い、査読付の海外誌に論文投稿を行い、研究成果を発表した。また偶然にも今年度は高等教育との関係での研究発表の機会を得たので、SB/CB幹部への訪問調査結果とシラバス分析の異同点について、研究発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、初年度に行ったパイロット調査結果を踏まえ、その研究成果を発表するとともに、条件不利地域のSB/CBの経営者に対する本調査を実施し、起業家の資源獲得メカニズムを解明する。具体的には、①研究初年度に蓄積された各種データ分析結果の学術誌への投稿、②更なる聞取調査の実施による資源獲得メカニズムの解明、③SB/CBの経営者に対する資源提供者へのパイロット調査、④上記に関する先行研究調査を実施し、その研究成果を、主に学術論文等で発表していくこととする。 しかし国内外での新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、上記の研究推進方策、特に現地訪問調査や国内外の学会参加の見通しが立てづらくなっている。 訪問調査については、各地における新型コロナウィルスの感染状況や、政府や各都道府県の緊急事態宣言等の要請の動向を見極めつつ、主に年度後半の実施可能性を模索する。また既に試行し始めている、オンラインによる遠隔地とのインタビューや書面インタビュー等の代替手段による調査実施を模索する。合わせて過疎地のSB/CBに関する各種公開情報からデータ収集を行うことを通じ、論文執筆等の可能性も追求する。 また当初参加を予定していた国内外の学会については、軒並み、中止や延期、オンライン開催等の手段の変更を余儀なくされつつある。国際学会については、新型コロナウィルスの世界的な蔓延を受けて、外務省が全世界への不要不急の渡航を制限していることもあり、参加が困難である。国内学会については、開催予定時期前の新型コロナウィルスの感染状況や、実施時期や方法の変更(延期またはオンライン開催等)を見極めつつ、参加の是非を検討する。新型コロナウィルスの感染拡大により、各種の学会参加が困難となった場合には、学会参加に代えて、国内外の学術雑誌への論文投稿を中心に行う計画へと変更していく。
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Causes of Carryover |
従量制によるテープ起こし費用が当初計上していたよりも少なくなったためである。(なお計画上は「人件費・謝金」に計上していた、テープ起こし費用等は「その他」で経費処理されている)。 具体的には、第一にSB/CBの経営者との関係構築やインタビューを優先し、同経営者に対する資源提供者へのインタビュー人数が減少したこと、第二にSB/CB経営者に対するインタビューについても事前調査を行い、質問内容を明確にするなどして、簡潔なインタビューを行ったため、当初よりも短時間でのインタビューを実施し費用を抑制できたこと、第三に可能な限り音源を明確に取ることで、作業負担料の追加発生を抑制したためである。 次年度には、新規に海外誌への投稿を予定しているため、今次発生した次年度使用額は、当初計上をしていなかった英文校正費用や海外誌投稿料に充当する他、国際的な論文投稿に必要な関連書籍など、物品費等、そしてデータベースの新規作成のための人件費等に充当することとする。
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