2019 Fiscal Year Research-status Report
経営者の時間志向性が企業多角化に与える影響についての実証研究
Project/Area Number |
19K13796
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
加藤 崇徳 茨城大学, 人文社会科学部, 講師 (70801992)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 企業多角化 / 全社戦略 / 時間志向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,経営者の時間志向性(長期志向性・短期志向性)が企業多角化に与える影響を実証的に検討することにある.本研究では,経営者の時間志向性を,従来の研究でよく用いられているletter to shareholders(「株主の皆様へ」)ではなく,アナリストと経営者の直接的な対話内容であるEarnings Call Transcriptを利用したテキスト分析によって測定する.これによって,経営者自らが記述したわけではない内容を分析するのではなく,彼ら自身の発言内容を分析でき,経営者の時間志向性尺度をより妥当に測定できるようになると考えられる.測定を終えた後は,経営者の時間志向性が,経営者による重要な意思決定の1つである企業多角化の程度にどのような影響を与えるのかを検証していく. 2019年度に行った活動は,当初の研究計画通り,データベース作成作業である.このデータベース作成作業は,大きく2つに分けられる.第1に,企業財務データ及び企業多角化変数の作成である.S&P社のCompustatというデータベースを用いて,大規模な米国企業の財務情報と,企業多角化の変数作成作業を行なった.企業多角化の測定では,関連多角化・非関連多角化の程度を測定している.この測定では,各事業セグメントがどのような産業に分類されるかが重要な情報となるため,Compustatを用いてそれらを入手している. 第2に,経営者の時間志向性についての変数作成である. Compustat(及びseekingα)を用いて,2008年以降のEarnings Call Transcriptを入手した.現在は,入手した3万件ほどの文書をコーディング作業している最中である.このコーディング作業が終わり次第,テキスト分析によって経営者の時間志向性を測定していく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度は,当初の計画通り,大型データベースの作成に取り掛かった.元データの収集は完了しているものの,当初の計画よりも調査対象企業を拡張(300社から3000社弱へ拡張)したため,文書のコーディング作業量が想定よりも多くなった.そのため,若干の遅れが生じている.しかしながら,コーディング作業が終われば,分析作業にすぐに取り掛かれる状態であるため,遅れを取り戻すことは十分可能であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,文書データのコーディングが終わり次第分析作業に入り,その結果を国内外の研究会・学会で発表する予定である.そのフィードバックを経て,より完成度の高い分析にしたのち,論文の執筆に入りたい.この際,研究協力者を募ることによって,データベースの完了・修正作業をより素早く行う体制を整えることも検討している.
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Causes of Carryover |
本研究で最も金銭的な負担が大きいのは,Compustatデータベースである.このデータベースは,S&P社との契約により,初年度よりも次年度のほうが契約金額が大きくなる.本研究費は,初年度よりも次年度のほうが支給額が少なくなるため,必要な経費を精査し,残額を次年度使用として当該データベース契約に充当することとした.
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