2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13798
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 諒 早稲田大学, 重点領域研究機構, 次席研究員 (90801283)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カテゴリ / メンバーシップ / メンバーの多様性 / カテゴリの境界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、あるカテゴリに属すメンバーの多様性が当該カテゴリの持続性に与える影響を明らかにすることにある。既存研究の多くがカテゴリの形成プロセスに注目してきたのに対して、本研究の主眼は、カテゴリ形成後のプロセス、すなわちその成長や衰退といったプロセスにある。 2019年度には、既存研究のレビュー、仮説およびデータセットの構築、分析を行った。レビュー作業を行った結果、メンバーの多様性がカテゴリの持続性に与える影響に関してこれまで対立した見解が示されてきたことが明らかになった。その状況に対して本研究では、多様性の高低ではなく、どのように多様性が保たれているのかに注目し、仮説を構築した。すなわち、カテゴリ内で類似の生産活動に従事するメンバーの集合をコミュニティと捉え、(1)コミュニティレベルで見たメンバーの多様性とカテゴリの持続性とは正の関係にある、(2)コミュニティ間のメンバーの類似度とカテゴリの持続性とは正の関係にある、という仮説を立てた。 本研究では、内生的なメカニズムを観察しやすいという理由から学問分野に注目し、分析を進めている。2019年度には、科研費データベースから取得したデータを使用し、分析を行った。その分析では、上記の仮説と整合的な傾向が観察された。この結果は、既存研究が着目するカテゴリレベルで見たメンバーの多様性ではなく、そのなかのコミュニティレベルでの多様性がカテゴリの持続には重要であることを示唆している。 上記の研究成果は、当初の計画通り、国内外の学会にて報告した。具体的には、2019年度組織学会研究発表大会にて理論モデルを報告し、そこで得たフィードバックをもとに行った分析結果をThe EGOS and Organization Studies Kyoto Workshop 2019にて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、既存研究のレビュー作業、仮説およびデータセットの構築、分析を進め、国内外の学会にて研究成果の報告を行った。レビュー作業で既存研究の問題を明らかにし、それを踏まえた仮説を構築した段階で国内の学会にて成果報告を行った。そこで有益なフィードバックが得られたため仮説を精緻化することができ、さらには構築すべきデータも明確になったため、分析を円滑に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の分析では、科研費データベースを使用し、マクロな現象の把握に主眼を置いていた。その結果は仮説と整合的であったけれども、ミクロなレベルにまで現象を深堀りできていないため、現象のメカニズムを理解するまでには至っていない。そこで今後は、特定の研究分野に絞り、関連する学会のデータを収集したり、研究者へインタビューを行ったりする予定である。そうした作業を通じて、なぜあるカテゴリは成長する(もしくは衰退する)のかという問いをミクロなレベルから分析していく。それらの分析結果と2019年度に行った分析とを統合し、論文として成果発信に努める。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、専門知識を有している者に名寄せ作業を依頼する予定であった。しかし、統計的に処理する手法を実施したことで、その作業が不要となった。分析対象を学術分野以外にも広げる計画であるため、それらのデータセットの構築作業の補助を依頼する予定である。また、研究作業全般を行うためのPCについては、他のPCで代用していたため現時点では購入していないが、2020年度に購入する予定である。
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