2019 Fiscal Year Research-status Report
International Comparison of Emotional Labor in Human Services
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19K13800
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
岡部 倫子 横浜国立大学, 地域連携推進機構, 研究員 (40839742)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 第3次産業(サービス業)就業者 / 新しい働き方 / 心理的契約違反 / 信頼 / 職務パフォーマンス / ボジティブな感情 / 職務満足 / 感情の枯渇 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界経済がサービス経済化する傾向に伴い、サービスを提供する企業や組織が増加し サービス就業者人口も増加している。世界のサービス就業者の働き方は、景気変動や就業者の労働意識の多様化に伴い、大きく変化している。近年では、日本の産業別就業者の推移傾向も、第三次産業(サービス業)の就業者が全体の70%以上を占める。特に、2019年度は、教育・学習支援、医療・福祉における就業者人口の増加が著しい。 他方で、近年はサービスを提供する企業間競争が激化し、経営合理化や人員削減が実施され、 IT や AI が、従来は従業員の仕事とされた業務を代替する。故に従業員は心理的契約違反を知覚している可能性がある。先行研究によると、従業員の知覚する「心理的契約違反」は、雇用主に対する「信頼」を低下させ、「職務パフォーマンス」も低下させる。 本研究の第一の目的は、経営合理化が著しいサービス企業を例に、従業員が顧客への対応に用いる「ボジティブな感情」が、従業員の知覚する心理的契約違反にボジティブな影響を与え、企業に対する信頼度の低下傾向を緩和し、さらに従業員の職務パフォーマンスの低下傾向を緩和する仮説を検証することである。また、先行研究によると、対人サービス従業員は、肉体的と精神的な疲労が重なると「感情の枯渇」に陥りやすく、さらに「燃え尽き症候群」から離職する問題点が指摘されている。本研究の第二の目的は、サービス就業者が、感情の枯渇などに陥らずキャリアを形成できるように、新しい働き方を提案することである。 本研究は、一方でアカデミック研究の潮流に貢献し、他方で、企業と従業員の新しい雇用関係を提案し、現実のサービス経済の発展に貢献する意義を達成する。2019年度は、これまでのフィールドワークとアンケート調査により収集したデータを分析し、その結果を国内・海外の複数の学会で発表、複数のジャーナルに投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、フィールドワークとアンケート調査の実施と並行して、国内・海外の学会発表を6回実施し、学術論文6論文(いずれも査読つき)が大会論文集あるいは学術ジャーナルに掲載され、書籍(共著)は4冊出版された。 令和元年度は、当初の計画よりも進展があったため、前倒し支払いを請求し、この請求が承認され、当初の計画をさらに推進することが可能となった。具体的には、海外におけるフィールドワークとアンケート調査を継続し、分析に必要なデータを収集し、分析結果を複数の学会で発表する機会に恵まれ、学会の大会発表論文集などに本研究員の研究論文を掲載することができた。その詳細として、当初の計画では、国内の2学会、海外の3学会、合計5学会での研究発表を計画していた。しかし最終的に、国内の4学会、海外の4学会、合計8学会に参加し、そのうち、国内の3学会、海外の3学会、合計6学会において研究発表を実施し、本研究員の研究論文が、大会論文集あるいはジャーナルに掲載された。他の2学会では、本研究員の研究分野の研究傾向ならびに方法論に関する情報を収集することができた。 以下は、令和元年度に、本研究員が参加した学会である。国内の学会4学会:日本心理学会、産業・組織心理学会、経営行動学会、組織学会。海外の学会4学会: 国際輸送研究会議 (World Conference on Transport Research Society: WCTR)、世界航空輸送研究学会 (Air Transport Research Society: ATRS)、応用人間工学国際会議 (International Conference on Applied Human Factors and Ergonomics: AHFE)、アカデミー・オブ・マネジメント(Academy of Management)。
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Strategy for Future Research Activity |
世界経済がサービス経済化するのに伴い、サービス組織ならびにサービス就業者が増加している。多くのサービス職業人が仕事で成功するために、本研究が明らかにしようとすることは、第一に現代のサービスを提供する企業や組織において、従業員が知覚する「心理的契約違反」が、企業に対する「信頼」を低下させ、従業員の「職務満足」と「職務パフォーマンス」を低下させる影響を、ヨーロッパとアジアで実施するフィールドワークとアンケート調査を通して明らかにすることである。 第二に、従業員の「ポジティブな感情」が、企業に対する信頼、職務満足ならびに職務パフォーマンスの低下を緩和する効果があるとする仮説を実証する。第三に、分析結果を国際比較し、低下傾向のある信頼、職務満足、そして職務パフォーマンスを回復するには、従業員の感情、個人の性格、文化的要因が関連する仮説を検証する。最終的には、現代のサービス就業者の新しい働き方を提案する。 令和2年度は、当初の計画では、ヨーロッパの企業でフィールドワークとアンケート調査を実施する予定であった。しかし、令和2年の初頭に発生した、新型コロナウィルスの世界的拡大の影響により、国際航空便の運航は停止され、ヨーロッパでのフィールドワークと研究発表は困難となった。他方で、当初予定されていた国内と国際会議のうち Web開催に変更された会議があり、2020年6月現在、本研究員が参加し研究発表をしたWeb会議は国内の1学会であるが、近日開催予定の海外のWeb会議にも動画とWebで参加する。 今後は、現在までに蓄積したデータの分析結果を出し、開催形式に関わらず学会発表をする。さらに、パンデミックの影響により、対人サービス就業者の働き方も変化すると考えられるため、世界情勢を注意深く観察し、新しい時代の新しい働き方を提案する。
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Causes of Carryover |
フィールドワークとアンケート調査、国内学会発表のための旅費。 令和元年度に未使用額が1575円生じたが、フィールドワーク、学会費、英文翻訳、いずれの費用を支払うにも十分ではなく、令和2年度の費用に繰り越して、学会費、あるいは英文翻訳の費用てに使用したいと計画している。
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Research Products
(12 results)