2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on process of sharing frameworks in inter-organizational collaboration
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19K13803
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
松野 奈都子 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (40732475)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | NPO / NPOと企業のパートナーシップ / 組織間関係 / センスメーキング / アクターネットワーク理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に行ったことは、事例分析のための概念枠組みの構築である。NPOと企業のパートナーシップ研究の新たな視点として、センスメーキングとアクターネットワーク理論を用いた概念枠組みを提示した。これまでのパートナーシップ研究では、ビジョンや価値観の共有が、パートナーシップの形成・実行において重要であることが指摘されてきた。先行研究では、ビジョンや価値観が似ているパートナーを選択することが、パートナーシップ形成の促進要因として明らかにされてきた。しかし、企業の場合には、特定の社会的課題に対する関心が低かったり、社会的課題に対する知識も十分ではないため、パートナーシップの形成前にそのようなパートナーを選択することは困難である。また、NPO側も企業活動に対する理解が不十分であり、過度な期待によってパートナーシップが壊れてしまうことも多い。 このような異質性の高さから生まれるコンフリクトを弱めるために、本研究ではパートナーシップのプロセスを通じて解釈の枠組みであるフレームを共有することが重要であると考えた。先行研究では、組織の主観的側面はあまり注目されてこなかったため、組織間での共通認識の形成プロセスも十分に検討されてこなかった。そこで、本研究はこの組織間のフレームワーク共有プロセスを分析するための概念枠組みとして、センスメーキングを提示した。センスメーキングを用いることで、組織内外でのフレームワークの形成プロセスを検討することが可能になる。しかし、センスメーキングの研究では、非人間的なモノはアクターとして捉えられておらず、その影響は見落とされてきた。したがって、本研究ではアクターネットワーク理論でセンスメーキングの概念を補強することで、人間のみでなく、非人間的なモノがフレームワークの共有プロセスに与える影響を捉えることができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、事例分析のための概念枠組みを構築するという面では、当初の予定どおりに進んでいる。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けてインタビュー調査を実施することができなかったため、質的データの収集は計画通りに行うことができていない。したがって、本研究課題はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、1. 概念枠組みの精緻化と2. 事例調査を行う予定である。
1. 2020年度に事例分析で使用する概念枠組みを構築したが、アクターネットワーク理論に関しては、追加的なレビューを行う必要があると考えられる。したがって、先行研究のレビューを実施し、概念枠組みの精緻化を試みる。
2. 事例調査 1. と並行して、事例の調査を実施する。本調査の目的は、①フレームワークを共有するためにどのようなフレーミングが行われ、どのようなセンスメーキングが発生したのかを明らかにすること、②パートナーシップの参加者は、どのようなプロセスを経て拡大していったのかを明らかにすることである。調査の対象として予定している根室市の環境保護活動では、当初は地元の中小企業経営者が中心となって非営利的な活動が行われていたが、その後、漁業関連者や市役所も巻き込み、活動が拡大していくという現象が確認されている。したがって、このように組織間関係に参加者を巻き込んでいくには、アクターネットワーク理論でいわれている翻訳戦略が有効であると想定している。事例調査によって、どのような翻訳戦略が行われていたのかを特定することを試みる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響を受けて、予定していたインタビュー調査が実施できなかったため、次年度使用額が発生した。2021年度は、インタビュー調査のための出張費用、音声データのテープ起こし費、謝礼、質的データ分析のためのソフトウェアの購入に使用する予定である。
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