2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K13821
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
鈴木 和宏 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (10708366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ブランド経験 / 顧客経験 / ブランド・エクスペリエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は研究プロジェクトの初年度であり2020年度から開始する各種調査の予備的考察の期間である。本年度はまず①先行研究のレビューと②顧客経験における複数ブランドの同時的な消費体験(統合的消費体験)に関する実態把握を行った。 ①先行研究のレビューについては、「joint consumption experience(統合的消費体験)」に関する論文、2010年以降の「ブランド経験」「顧客経験」に関する論文について行った。申請時の通り、統合的消費に関する研究は非常に少なく、一方で、統合的消費体験を検討する意義が再確認された。例えば、顧客経験マネジメントの研究において実務家ヒアリングにおいて顧客経験を構成する他ブランドとの「連携志向」の必要性が確認されており(cf. Homburg et al. 2017)、統合的消費体験の仕組みを究明する意義が再確認された。また、次年度の調査に向けてブランド経験および顧客経験の定義と尺度も収集した。 ②合同的消費体験の実態把握については、学生20名を対象に顧客経験に関するヒアリングを行った。その結果、ほとんどの顧客経験内に複数の製品ブランドやサービス・ブランドについての同時的な消費体験(統合的消費体験)が観測された。また、顧客経験に対する評価はそれぞれのブランドの消費体験により影響を受けており、その影響は消費体験の内容や顧客経験内における意味づけにより異なる可能性が確認された。すなわち、統合的消費体験は多くの顧客経験において生じるものであり、統合的消費体験を構成する各ブランドの消費体験は消費体験間の関係や顧客経験との関係で、顧客経験に与える影響が変わることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年度の達成目標は①日本版ブランド経験尺度の統合と使用する尺度の決定、②統合的消費体験とそのブランド経験および顧客経験への影響に関する定性的な把握であった。それぞれの項目の進捗状況から判断すると「やや遅れている」状態である。 ①については、尺度の収集は文献調査を通じて行ったものの、2019年度に定量調査を実施することを見送った。ブランド経験に関する尺度を開発した他の研究者と意見交換した上で調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの流行により調整していた出張・面会ができない状況となり、次年度に持ち越すことにした。したがって、①はやや遅れている状況であると言える。 ②については、予定人数の学生に対してヒアリングを実施し、予定していた通り統合的消費体験とその顧客経験への影響について存在を確認することができた。したがって達成できていると判断できる。 以上のように、①はやや遅れており、②はおおむね順調に進展していることから、全体としては「やや遅れている」という評価となる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は申請書に記載した計画の通り、①日本版ブランド経験尺度の統合と使用する尺度の決定、②2つのブランドの統合的消費体験によるブランド経験および顧客経験への影響の検証を行う予定である。 ①は2019年度に予定していた事項である。他の研究者の意見を収集した後、web調査を実施し②で使用する尺度を決定する。 ②は2019年度に行った学生ヒアリングに基づいて実施する。現在、影響の大きさ、学術的な意義などの観点から操作する変数を選定中である。そのために、処理モードや関連性理論に関する先行研究のレビューを行う。また、当初予定していなかったヒアリングを行う必要が生じた。2019年度のヒアリングでは、統合的消費と顧客経験に関しては多くの影響(相互作用)が見られたものの、ブランド経験間の影響に関してはそれほど多くの事項を抽出できなかった。よって、複数のブランド刺激を用意した上で改めてヒアリングを行う必要がある。現在、新型コロナウイル流行の影響により大学において学生の入校が禁止されているため、解除され次第調査を進めたい。これらの作業が終わり次第、使用する変数を操作して実験室実験もしくはweb調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
最も大きな理由は、【現在までの進捗状況】にて記載の通り、新型コロナウイルの影響により、当初予定していたweb調査の実施を翌年に繰り延べたためである。また、消耗品の購入金額が予定よりも少なかった。これは、購入予定であった電子ジャーナルについて、論文概要を精査したところ、一部は購買する必要性が無かったためである。 これらの費用は、繰り延べられた調査と追加的に実施する必要性が生じたヒアリングの謝金に使用する予定である。
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