2019 Fiscal Year Research-status Report
潜在意味解析モデルと計算機シミュレーションによる決定方略の推定と意思決定支援
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19K13825
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
玉利 祐樹 静岡県立大学, 経営情報学部, 講師 (60737360)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 意思決定 / 情報モニタリング法 / 過程追跡法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、まず意思決定方略の推定に用いるための、意思決定の情報処理過程の指標の検討を行った。従来、情報走査時における移動パターンの指標として、利得行列の行方向に移動した回数(属性間移動)と列方向に移動した回数(選択肢間移動)、および斜めに移動した回数に基づいた指標が用いられてきた。移動パターンによる決定方略の分類精度を向上させるため、この従来の指標を行列の要素間の推移パターンに拡張した移動パターンも加えることとした。多属性意思決定過程における決定方略の計算機シミュレーションで求めた移動パターンデータと情報モニタリング実験で得られた移動パターンデ―タの対応から、最も実験データに適合する方略を推定した。次に、方略の違いによる意思決定の良さあるいは悪さの指標の違いの検討を行った。また、従来用いられてきた線形期待効用に基づいた指標に加え、社会的意思決定の枠組みで用いられる社会的選択関数のに基づいた指標も作成した。計算機シミュレーションにおける変数は、決定方略(加算型、加算差型、連結型、分離型、EBA型、辞書編纂型、勝率最大化型およびそれらの組み合わせ)、選択肢の数、属性の数、ドミナンスの有無、ウェイトの分散の高低であった。計算機シミュレーションの結果から、意思決定の良さを評価する指標では、加算差型、連結型を用いた場合に、良い決定をする傾向が示された。また意思決定の悪さを評価する指標では、加算型、勝率最大化型を用いた場合に、悪い意思決定を避ける傾向が示された。今後は、潜在意味解析モデルを用いて、実験データの背後に想定される潜在的な決定方略の組み合わせを推定し、上記の指標を用いて推定結果の精度について検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画では、潜在意味解析モデルを用いた意思決定方略の定量的推定法を開発し、開発した手法を用いて推定された方略と意思決定の関係を定量的に検討し、消費者の意思決定支援に向けた処方的な利用方法の提案を目的と する。2019年度は、計算機シミュレーションを用いて、意思決定結果の良さ・悪さの評価の検討を行い、また意思決定の情報処理過程に関し、シミュレーションデータと実験データとの対応関係を検討した。潜在意味解析モデルの適用には至っていないものの、評価指標、シミュレーションデータと実験データの対応関係についての検討結果を用いることで、推定された決定方略の適合度を検討することが可能であると考えられる。決定方略の可視化に有用な情報となることが期待される。よって、研究計画全体としては、おおむね計画通りの進捗であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2019年度の分析で検討した評価指標と、シミュレーションデータと実験データの対応関係の検討方法を用いて分析を進める。具体的には、意思決定における情報処理データに潜在意味解析モデルを適用し、潜在的な決定方略の推定を行い、また意思決定結果との関係についても定量的に評価を行う予定である。分析結果から、決定方略の可視化表現の方法についても検討を行う。また、これまでの研究成果について、学会で発表・議論するとともに、論文化を進めていく。
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