2023 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Research on Musical Instrument Wholesalers and Dealer Associations in Japan
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19K13832
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
田中 智晃 東京経済大学, 経営学部, 教授 (50609188)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 楽器 / 卸商 / ヤマハ会 / 流通系列化 / 流通革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は本研究の目的でもある楽器卸業者と特約店団体(ヤマハ会)に関する論文、著書を発表することができた。 (1)、「楽器産業における流通革命:新見楽器とヤマハ会の歴史的考察 」『東京経大学会誌(経営学)』322号、71-95頁、2024年2月。 (2)、『新見楽器のあゆみ』新見楽器株式会社、 2024年2月。 これらの成果は、新見楽器に所蔵されている経営資料とヤマハ会の会議資料によって得られた。特に、(1)ではこれまで非公開でであった内部資料を駆使して、卸売商がメーカーの流通系列化(流通支配)が進む中で、流通の結節点として重要な役割を果たしていたことが実証された。特に1960年代以降、ヤマハとの関係において、卸商である新見楽器は自らの存在意義が問われる中で、業界に先駆けて社内のシステム化を図り、効率的な流通機構を作り上げてきた。この結果、メーカーからの流通系列化、大規模小売店からの流通革命が進行する中で、中間業者として同社は業界にとって必要な存在として生き残った。 一方で、特約店団体(小売店団体)であったヤマハ会は、ある意味、メーカーの流通系列化を補強する組織であったが、楽器には様々な付属品(アクセサリー)が必要で、楽器本体に関してもピアノなどの一部の楽器以外はメーカー間で比較購入されることが多い。このため、ヤマハ会に所属する小売店でもヤマハ・ブランド以外の商品を店頭に並べなければならない。この時に活躍したのが、様々なメーカーと取引できた新見楽器であった。つまり、卸商が系列組織であるヤマハ特約店を支えていたことになる。 このように楽器業界では、流通系列化や流通革命が進行する中で、中間業者である卸商排除が起こるはずであったが、新見楽器などの一部の卸商は逆に存在価値を高めていたことが分かった。(2)では、その新見楽器の歴史を100年間に渡って記述し、日本における卸商の存在意義を問う内容となった。
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