2020 Fiscal Year Research-status Report
Application of Case-Based Decision Theory for the Marketing
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19K13839
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Research Institution | Atomi University |
Principal Investigator |
郷 香野子 跡見学園女子大学, マネジメント学部, 講師 (80799908)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 消費者意思決定 / 新製品採用 / 多機能製品 / 類似度 / 事例 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今の製品・サービスを選択する状況は,製品の技術や情報の進展とともに複雑性を増している。人工知能や拡張現実のように新しい機能や属性を持つ製品が次々と発売されているだけでなく,スマートスピーカーのように製品同士を接続することで価値が広がっている。これらの複雑な属性を持つ製品や多様な機能を持つ製品の場合,マーケティングで前提とされてきた,製品の多属性による意思決定モデルが適用できないような場合もある。これに対し,本研究では,多属性意思決定とは異なるアプローチである「事例ベース意思決定理論(CBDT)」 (Gilboa and Schmeidler 1995, 2001)を用いて,新製品の採用を説明することを試みている。この理論は,人が過去に経験した「事例(本研究では既存の製品の経験としている)」に基づいて決定することをモデル化したものであり,製品の属性を評価できない状況での消費者の採用意思決定を説明できる可能性を持つ。 過去の研究では,消費者の革新的な製品の採用意思決定をCBDTで説明できることを実証した(郷,2018, 2019)。期間中の研究では,この理論をマーケティング戦略に結びつけることを目的とし,この背景にある(1)製品情報を得た際の消費者の認知過程を理解とCBDTでの考慮方法の検討,(2)製品情報の学習過程の理解とCBDTでの考慮方法の検討,(3)理論的な検討を実際の購買行動データを用いて検証を行っている。 2019年度は,(1)として,消費者が新製品に直面した際にどのような方法でどのような事例を参照するのかといった事例の参照モデルを構築し,理論的に検証した。2020年度は,(2)として,製品の多様な機能が与えられた状況を想定してCBDTにおける組み込み方法を検討した。これらを通して,マーケティングのポジショニング戦略やプロモーション戦略にCBDTを結びつけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,上記(1)であげた,製品情報を得た際の消費者の認知過程を理解とCBDTでの考慮方法の検討と上記(3)であげた,理論的な検討を実際の購買行動データを用いて検証を行う予定でいた。後述する通り,研究期間を延長したことに伴い,2020年度は,上記(2)であげた,製品の多様な機能が与えられた状況を想定してCBDTにおける組み込み方法について取り組んだ。具体的には,製品同士を接続することで価値が広がる多機能製品を例に,それぞれの機能のどれを得るかによって消費者の意思決定方法やCBDTにおける既存製品との類似性の評価が異なることを検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は,上記(2)であげた,製品の多様な機能が与えられた状況を想定してCBDTにおける組み込み方法について消費者実験を通して理論的に実証する。なお,消費者実験の準備は概ね完了しており,順調に研究を遂行できる。 これに加え,2019年度に検証したCBDTにおける消費者の事例を参照方法に関する知見,2020年度から2021年度にかけて取り組む消費者の学習過程とCBDTでの考慮方法に関する知見に基づき,上記(3)であげた,実際の購買行動データを用いた検証を行う。購買行動データも入手しており,実証できると見込んでいる。
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Causes of Carryover |
2020年度はCOVID-19の影響を受け,成果発表のための学会参加費やそれに伴う旅費を使用しなかった。2021年度もこの目的での使用が困難と思われるため,その他(外部委託調査による消費者調査)等として使用する予定である。
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