2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13845
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
上山 晋平 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (30708334)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 予算管理 / 稟議制度 / 責任共有 / 実態調査 / 日本的管理会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、予算管理における稟議制度の意義について、とくに予算管理において稟議制度の責任共有の作用が、予算管理における参加や垂直的および水平的相互作用にいかに影響を及ぼすのかについて研究し、実態調査にもとづく分析結果により、理論を構築することを目的とする。調査方法は、先行研究やこれまで行った日本の企業に対する郵送質問票調査やインタビュー調査の検討により、明らかとなった課題にもとづき、引き続き、郵送質問票調査およびインタビュー調査を行うものとする。近年行われてこなかった実態調査を継続的に行うことで、現代の日本的予算管理の特徴について、より正確な実態を把握することができ、新たな側面を見出すものと考えている。 2019年度は、2019年8月から9月に、東京証券取引所一部上場企業2,141社の経理部宛に、郵送質問票調査を実施した。稟議制度の責任共有と相互作用、アカウンタビリティ共有機能に着目し、予算管理における稟議制度のそれらの機能についてその実態を把握するためのものであった。郵送質問票調査の有効な回答企業数は154社(回収率7.19%)であった。分析の結果、稟議制度によって責任共有がもたらされ、責任共有が生じるところでは、公式的な稟議手続と非公式的なルートによって相互作用がもたらされ、合意が得られればそこにアカウンタビリティの共有が生じることが明らかとなった。この研究成果については、2019年9月3日に日本原価計算研究学会(第45回全国大会)で報告を行い、日本原価計算研究学会学会誌「原価計算研究」に掲載予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、予算管理における稟議制度の意義について、郵送質問調査およびインタビュー調査にもとづき、実態を解明し、理論を構築し、近年行われてこなかった実態調査を継続的に行うことで、現代の日本的予算管理の特徴についてより正確に把握し、新たな側面を見出すものである。 2019年度は、日本企業の予算管理における稟議制度の意義に関する実態について、調査対象企業の広がりを以って把握するため、東京証券取引所一部上場企業2,141社の経理部宛に郵送質問票調査を行った。その調査結果により、稟議制度によって責任共有がもたらされ、責任共有が生じるところでは、公式的な稟議手続と非公式的なルートによって相互作用がもたらされ、合意が得られればそこにアカウンタビリティの共有が生じることが明らかとなり、その実態を解明し、理論を構築することができた。 また、稟議制度では、アカウンタビリティを共有した者同士が、相互に大きな影響を受けるとは限らないといえそうであることも明らかとなり、稟議制度において、アカウンタビリティを共有しつつ、一人ひとりのアカウンタビリティの重要性を強調すべきかを検討するなど、更なる課題を確認することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
稟議制度は日本企業特有の制度であると考えているが、今後は、その責任共有の作用については他国の企業と比較する必要があると考えている。日本企業の経営は集団主義の傾向にあり、稟議制度といわれる、職務権限を越えて協力が行われる仕組みがあるが、管理者一人ひとりの職務権限と責任が不明確であるといわれる。それに対し、米国企業の経営は個人主義の傾向にあり、管理者の職務権限と責任は明確であるが、管理者同士が協力し合う仕組みづくりが求められているといわれる。そこで、日本企業と米国企業を対象に、予算管理の責任共有について郵送質問調査を実施し、日本企業と米国企業において予算管理における責任共有についてどのような違いがあるのかを明らかにし、予算管理における稟議制度の意義についてより明確にしたい。 また、これまでは調査対象企業の広がりを以って把握するため、郵送質問調査を中心に行ってきたが、今後はインタビュー調査も行うことにより、実際の運用状況を把握することも検討したい。
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Causes of Carryover |
調査のための物品購入が増え、インタビュー調査を次年度以降に繰り越し、旅費が減ったため。
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Research Products
(2 results)