2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K13845
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
上山 晋平 小樽商科大学, 商学部, 准教授 (30708334)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 予算管理 / 稟議制度 / 責任共有 / 実態調査 / 日本的管理会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、予算管理における稟議制度の意義について、とくに稟議制度の責任共有の作用について研究し、実態調査にもとづく分析結果により、理論を構築することを目的とした。 稟議制度は日本企業特有の制度であると考えているが、その責任共有の作用については他国の企業と比較検討する必要があると考えていたため、日本企業と米国企業を対象に、予算管理の責任共有についての実態を把握することを目的に、2021年1月から2月にかけて『FORTUNE』掲載の米国企業売上上位1,000社および東証一部上場の日本企業2,172社の経理部を対象に郵送質問票調査を実施した。 新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う影響が大きいことが予想されたため、それに伴う職務権限や責任共有の実態についての質問が多くなったが、日米企業における予算管理における責任共有についてどのような違いがあるのかを明らかにし、予算管理における稟議制度の意義についてより明確にしようとした。 予算管理においては管理者の職務権限と責任の明確化が前提であり、コロナ禍をはじめ経営環境の変化の激しい昨今においては、職務権限を越えた協力も必要である。日本企業においては、稟議制度が職務権限を越えて協力が行われる仕組みとなり、管理者一人ひとりの職務権限と責任が不明確であるといわれる。それに対し、米国企業においては、管理者の職務権限と責任は明確ではあるが、管理者同士が協力し合う仕組みづくりがあるのではないかと考えた。 コロナ禍における、予算実施責任者および予算管理者の職務権限、職務権限の範囲を越えた協力、会計責任の範囲、責任共有の実態についての調査であったが、コロナ禍の影響もあり、米国企業からの有効な回答企業数は数社で比較検討を行うことはできなかった。日本企業からの有効な回答企業数は167社(回収率7.7%)であり、2021年度、集計結果にもとづく検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は、日本企業の予算管理における稟議制度の意義に関する実態について、日本的予算管理の特徴を把握するため、日米企業における予算管理の責任共有について、比較検討による研究を進めた。 予算管理においては管理者の職務権限と責任の明確化が前提であり、コロナ禍をはじめ経営環境の変化の激しい昨今においては、職務権限を越えた協力も必要である。日本企業の経営においては、集団主義の傾向にあり、稟議制度が職務権限を越えて協力が行われる仕組みとなり、管理者一人ひとりの職務権限と責任が不明確であるといわれる。それに対し、米国企業の経営においては、個人主義の傾向にあり、管理者の職務権限と責任は明確ではあるが、管理者同士が協力し合う仕組みづくりがあるのではないかと考えていた。 コロナ禍の影響もあり、米国企業からの有効な回答企業数が少なく、米国企業における実態を解明することができなかったため、比較検討を行うことはできなかった。しかしながら、日本企業からは有効な回答を167社(回収率7.7%)頂いており、日本企業における現在の実態は把握できるため、2021年度、集計結果にもとづく検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
稟議制度は日本企業特有の制度であると考えているが、今後は、海外に進出している日本企業がいかにその制度を現地の企業に適用しているのかを検討する必要があると考えている。 2021年度後期は、マレーシアにて在外研究を行う機会を得たため、在マレーシア日系製造企業における予算管理実務について、マネジメント・コントロール上の相互作用に着目して研究を行う予定である。在マレーシア日系製造企業が、いかに予算管理のローカル化(現地適用と現地適応)を図り、社内および本社との相互作用の促進を実現し、企業全体としてマレーシアと日本の両方の変化に対応しているのかについて検討する。 研究方法は、在マレーシア日系製造企業への郵送質問調査にもとづき、実態を解明し、理論を構築する。マレーシアにおいて在外研究を行い、現地の先生にアドバイスをいただきながら、より実態に即した研究を行う。コロナ禍での制限はあるかもしれないが、マレーシアと日本の文化的特質を反映した管理会計実務を見出すことができるのではないかと考えている。
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Causes of Carryover |
調査のための物品購入が増え、コロナ禍のためインタビュー調査を行わず、次年度以降に繰り越すもの。
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Research Products
(1 results)