2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of Management Control System for Quality by the Collaboration between Agriculture and Welfare
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19K13846
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小杉 雅俊 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (10734197)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | マネジメント・コントロール・システム / 成果コントロール / 行動コントロール / 人事コントロール / 文化コントロール / 農福連携 / 非営利法人 / 社会福祉法人 |
Outline of Annual Research Achievements |
農福連携の事例研究により、福祉施設の利用者に対するマネジメント・コントロールの実践が、福祉施設の理念の実現や事業収益の拡大と、利用者自身の目的達成を同時的に実現できることを明らかにした。福祉施設の利用者は、対象法人での作業を選択する立場にあり、この意味において顧客としての立場にある。しかし、本研究の調査事例においては、顧客(利用者)をコントロールする上での困難が発生していなかった。この理由は、主に文化コントロールが効果的に機能することで、施設職員と利用者の区別なく「みんなで一緒に足を使って農業をやろう」という概念が浸透し、利用者が福祉施設そのものや、自分の作業に対して愛着を持ち、誇りを感じることで、利用者が顧客としての意識ではなく、「仲間」としての意識を持つからである。この概念は、法人の設立目的や理念に込められた、障がい者の社会復帰や自己実現を導くためのものであり、同法人の実務実践とその仕組みであるMCSに整合的に反映されている。利用者の体験により醸成される組織への愛着と誇りは、彼らの仲間意識だけでなく、農作業といった実際の業務にも現れ、これが農作物の質を高めたり、増収増益を実現させる大きな要因になっている。仲間に貢献できているという実感を、利用者は日々の農作業の体験とその達成感で得ており、さらなる成長が促される仕組みになっている。この実現のために、調査事例においては丁寧な成果コントロールと人事コントロールの実践が行われていた。文化・成果・人事の3つのコントロールが補完的に機能している。さらに、本研究の調査事例から、行動コントロールが人事コントロールに代替されるため存在しない状況で、利用者のコントロールが成功しているという事例が実在することを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初研究計画で想定していた調査実施ができなかったため「やや遅れている」として進捗を報告する。これは、新型コロナウィルス感染拡大にともなって、現地調査や対面形式でのインタビュー実施を差し控えるといった影響が及んだためである。この間に、研究の礎となる各種研究フレームワークの理論的な整備作業などを徹底するとともに、研究計画時には想定していなかったWeb会議システムの導入・活用など、各種オンラインツールを通じた研究活動を進展させ、調査ネットワークを拡大させることができた。現状では、当初研究計画の目標を達成するための準備が整っており、研究期間延長申請を行い、研究調査を進展させる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の変更に対する対応として、研究最終年度の延長申請を実施し、当初計画よりも研究期間を1年間伸ばすことになった。今後の研究の推進方策は以下のとおりである。
(1) 成果論文を公表する過程で、査読者よりいただいた各種コメントから新たな視座の気付きがあり、この点のブラッシュアップを研究の進展に加える。 (2) 訪問調査に関しては、各種ガイドラインなどの遵守を徹底しながら継続する予定であるが、オンライン・オフラインの両面から調査の実施形態の是非に関する精査を進めながら、慎重な実施を心がける。例えば、インタビュー調査については、十分な感染予防対策が取れない場合には訪問時期をずらすなどの措置を柔軟に行い、必要に応じてオンライン会議ツールを活用した形式での実施形態に変更するなど、インタビュイーの健康・安全を第一に配慮することを第一とした調査活動を徹底する。 (3) 現場で実際に使用されている1次資料(財務資料、内部資料)、広報刊行物等、活動記録といった調査先提供資料などを対象に、文献や資料に基づく分析を本格的な分析対象と位置づける。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルス感染拡大により、現地調査や対面形式でのインタビュー実施を差し控えるといった影響があり、当初計画通りに調査目的の旅費を執行するに至らなかったため。また、研究成果報告に関する旅費も、国際学会の延期などにより執行に至らなかった。これにともなって、その他としている英文較正関連費用や投稿費用の支出を見送った。これらの活動を次年度に実施する目処が立ったことから、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)