2021 Fiscal Year Research-status Report
競争的環境下における企業のイノベーション活動と戦略的情報開示
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19K13851
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
三輪 一統 大阪大学, 経済学研究科, 講師 (00748296)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 会計学 / 財務会計 / ディスクロージャー |
Outline of Annual Research Achievements |
イノベーションの創出を通じた生産性の向上や既存製品の品質改善,新製品の導入は,持続的な経済成長の実現において重要な役割を有している.本研究ではとくに企業の情報開示とイノベーションの関係に注目し,イノベーション関連情報を含む企業の情報開示インセンティブを解明するとともに,それを踏まえたうえで,望ましい情報開示制度のあり方について検討することが本研究の目的である. 2021年度はまず,以前から継続して取り組んでいる,企業の情報獲得行動と情報開示との関係に関する研究について,ワーキング・ペーパーの大幅な改訂をおこなった.具体的には,理論パートを拡張および一般化したかたちに加筆修正したうえで,理論のメカニズムにより即した分析結果を追加した. また,企業のイノベーション活動とその関連情報の開示をより直接的に分析する理論モデルを構築するために,関連する実証研究のサーベイをおこない,カギとなる要因とそのメカニズムについて検討した.企業の財務報告や情報開示とイノベーションについては,とりわけ近年,多くの実証研究がおこなわれている.それらの実証研究では,たとえば,企業の透明性,財務報告の頻度や質,同業他社との会計情報の比較可能性といった要因と,企業のイノベーションとの関係について検討されている.また,より直接的にイノベーションに関連する情報として特許情報の開示制度に注目している実証研究もあり,特許情報の開示は,ライバル企業の開示から有用な情報が得られることによるスピルオーバーの便益が存在する一方で,自社の開示からはライバル企業に有用な情報を知られてしまうことによる機密コストが生じることが示唆されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究実績の概要にも記載したように,企業のイノベーション活動とその関連情報の開示をより直接的に分析するための理論モデルの構築に取り組んでいるが,当初予定していたほどは進捗していない.また,COVID-19の影響等のため,参加者を実験室に集めた経済実験の実施ができなかった.そのため,全体として,本研究課題は,やや遅れていると判断している.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き理論モデルの構築とその分析を進める.また,依然としてCOVID-19の影響下にあるが,今後状況が許せば,経済実験を実施したいと考えている.ラボ実験の実施が難しいようであれば,オンライン実験の実施を検討したい.また,改訂をおこなったワーキング・ペーパーについては,なるべく早い段階でジャーナルへ投稿する.
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響のため,謝金支払いをともなう経済実験が実施できなかったこと,学会や研究会への参加のための出張がなかったことが,次年度使用額が生じた理由である.この次年度使用額については,実験参加者への謝金の支払い,学会・研究会が対面で実施されるようになった場合の出張旅費,ジャーナルに投稿する際の英文校正や投稿費用に使用することを計画している.
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Remarks |
An Experimental Study on Information Acquisition and Disclosure in a Cournot Duopoly Market. Discussion Papers in Economics and Business No.13-01-Rev.
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