2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K13852
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
篠崎 伸也 佐賀大学, 経済学部, 准教授 (10636898)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペイアウト / 費用構造(営業レバレッジ) |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年は、主にデータセットの構築と先行研究のサーベイを実施した。データセットの構築については、日経NEEDS FinancialQuestと契約したうえで、データをダウンロードすると同時に統計分析用にそれらを加工した。先行研究のサーベイについては、発表年度と国内外にかかわらず、引用頻度が高い文献を可能な限り読み込み、サーベイ論文としてまとめた。なおサーベイ論文は投稿する雑誌の関係で2020年の5月くらいに発表される予定である。サーベイの結果、以下の点が明らかとなった。
まず費用構造を統計データを使って表現する場合、①財務諸表(貸借対照表や損益計算書)に掲載される費用の項目を使うか、②財務諸表と統計モデルを使って推計するかのいずれかの方法がとられていた。①については、様々な財務指標(総資産に占める固定資産の割合など)が計算されていた。しかしこれらの指標は、いくつかの先行研究で費用構造以外の意味で使われており、多様な解釈が可能となっている。よって今回の研究でこれらの変数を採用する場合は、慎重に解釈する必要があることを再確認できた。②については、様々な統計モデルが提案され、それぞれに長所と短所を抱えていることが判明した。
次に費用構造はペイアウト政策にかぎらず、その他の財務政策(資本構成、投資)、株価リターンや株式のリスクにも影響をもたらしていたことがわかった。とりわけ資本構成、株価リターンと株式のリスクに関連する先行研究が多く、ペイアウトに関するものは相対的に少なかった。特に資本構成や株式のリスクはペイアウト政策にも影響する可能性が高いため、これらをコントロールした分析を実行していく必要があると再確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データセットの構築に関しては、申請者の所属機関とデータ会社との契約が当初予定していた時期よりも大幅に遅れることになった。データ会社が提案した契約時期を採用すると、所属機関の会計処理に影響が出る可能性があり、変更を余儀なくされたためである。
論文のサーベイについては、取り上げる論文数があまりにも多く、読解と整理に想像以上に時間を費やすことになった。また体調不良も重なったため、サーベイ論文の執筆と修正が遅れることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年は以下のように、研究を進めていく予定である。まずデータセットの構築は4月を目途に完了させ、必要な変数の構築と計量分析に着手する。そして研究成果を可及的速やかに論文にまとめ、査読雑誌に投稿する予定である。
サーベイ論文は今年度の5月に刊行できるので、本年度の研究に適宜、取り入れていく予定である。
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Causes of Carryover |
当該助成金が発生した理由は、データ会社との交渉の結果、当初の予定額よりも安くデータの契約を締結できたためである。残った金額については、研究に使用する研究資源(書籍、追加的に必要となったデータベースの購入、外出・移動が可能になれば出張費や旅費)に充当する予定である。
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