2019 Fiscal Year Research-status Report
The study of inter-organizational controls in a global business environment
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19K13861
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
井上 慶太 成蹊大学, 経済学部, 助教 (70825158)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 組織間管理会計 / マネジメント・コントロール / サプライヤー関係 / 協働 / 境界連結者 / グローバル化 / 学習 / 顧客価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,グローバル化が進むサプライヤー関係に対応するため実践されるマネジメント・コントロールを明らかにすることである。管理会計の研究では,サプライヤーとの取引経験に裏づけられた信頼に基づきマネジメント・コントロールを実践することでバイヤーにとってコスト競争力上高い効果があると考えられてきた。 一方,事業のグローバル化が進む企業にとって,従来のように長期的関係を前提とすることは難しくなっており,絶えず変化する環境への柔軟な対応が求められている。しかし,グローバル環境に適した組織間コントロールがどのようなプロセスで行われているのかは,その重要性にもかからずこれまで十分議論されていない。本研究では,サプライヤーとの調整を担うキーパーソンである境界連結者の行動に着目し,グローバル化が進むなかで,サプライヤー関係に対するコントロールがどのように実践されているのかを明らかにすることを目的としている。そのために,文献研究とインタビュー調査によって研究を実施する。 2019年度は,本研究課題の理論枠組みを構築・分析するために文献調査とインタビューを行った。文献調査では,国内・海外のジャーナルに掲載された管理会計や経営関連の文献を整理・検討した。また,インタビューでは,旅行会社でサプライヤーとの調整を中心的に担う販売や仕入の担当者に対して,コスト競争力の向上と顧客への価値提案をどのように両立しているのかについて調査した。結果,当該担当者を中心とした情報交換や活動の調整をつうじて,サプライヤーとの関係における管理会計が実践されていること,また,それは取引相手との試行錯誤を経て改善されていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症などのため,調査企業の国内・海外の事業拠点へのインタビューを多数中止せざるを得なくなった。当初予定していたインタビューの一部を実施できなかったことから,この判断とした。 一方で,研究成果の一部については国内・海外の研究会や学会において積極的に報告してきた。とくに,国際的な研究会・学会で報告したことでイギリスのChris Chapman教授をはじめ管理会計研究の最前線で活躍する研究者からフィードバックを得る機会があり,研究改善のための手がかりをつかむことができた。また,インタビューが中止になった分,新たに利用できるようになった時間をすでに収集したデータの考察や文献調査,分析枠組みの再検討に充てることができた。そして,今後の研究報告にむけたペーパーの準備について見通しをつけることもできた。 以上のことを総合すると,当初想定していなかった事態に直面しており計画の見直しが必要な部分はあるものの,次年度以降の調査研究のための準備は着実に進んでおり,現在の遅れは克服可能だと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
主に2つの方策を予定している。第一に,研究成果の一部について研究会・学会で発表することである。ペーパーの準備を継続して進め,2020年度の研究会・学会で報告する予定である。研究報告において得たコメントを踏まえてさらにペーパーを改善していき,学術論文として公表を目指す。第二に,追加のインタビューを実施することである。ただし,新型コロナウイルス感染症の影響により,現状では調査企業へのインタビューができなくなっている。現在のような状況が長期的に続く可能性があることにも注意し,当面の間は第一にあげたペーパーの質向上に重点を置いて取り組む。調査企業から許可を得た段階で,第二にあげた追加のインタビューを行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症などにより本年度予定していた国内・海外でのインタビュー,および研究会・学会への参加を中止せざるを得なくなったものが多くあり,その分の旅費,インタビューのテープ起こしやデータ分析にかかる費用が支出できなかった。そのために当該使用額が生じた。 次年度においては,第一に,研究成果の一部について研究会・学会で発表する予定である。ペーパーの準備にあたり,図書や資料(電子データを含む)の購入ないし複写,データの管理と分析に必要なソフトウェアの購入とサービス利用にかかる費用を支出する予定である。また,英語による研究報告も計画しており,英文校正やテープ起こしのための費用を支出する予定である。なお,新型コロナウイルス感染症のため研究会・学会の多くがオンライン会議などに移行しつつあることから,不安定な通信環境を改善するための通信サービスの利用,電子機器の購入,データベースの利用にかかわる費用が必要である。第二に,調査企業より許可を得た段階で,追加のインタビューを行う。そのさいには,事業所に訪問するための旅費,テープ起こしやデータ分析のための費用が必要である。
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