2019 Fiscal Year Research-status Report
わが国企業の予算管理実務における管理可能性原則の適用に関する研究
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19K13865
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
町田 遼太 早稲田大学, 商学学術院, 講師(任期付) (70779149)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 管理可能性原則 / 予算管理 / 研究方法 / 質問表調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,既存の管理会計理論において支配的な概念とされてきた「管理可能性原則」の管理会計実務における適用と組織が有する特質との関係を明らかにすることである。この目的を達成するために,平成31年度は(1)研究方法(2)先行研究の整理と予備的な調査の発信(3)質問票調査の設計の3つの研究を実施した。 (1)については,中期経営計画の要素と業績との関係を質的比較分析(Qualitative Comparative Analysis: QCA)と呼ばれる研究方法によって明らかにした。この研究方法は,管理会計手法とそれを取り巻く要素との適合関係を明らかにするほか,マネジメント・コントロール・システムのシステムが全体としてどのように機能するのかを明らかにするものである。その成果を2019年8月に日本原価計算研究学会全国大会(成蹊大学)で共同で報告し,論文投稿・受理(2020年秋公表予定)された。次に(2)については,管理可能性のマネジャーの認知と予算管理の利用,先取的行動およびパフォーマンスとの関係について先行研究の整理および予備的な定量分析を行ったものを英文で論文化した。その成果については,2020年3月に16th Annual Conference for Management Accounting Research(ドイツ・ヴァレンダー)に投稿・受理され,学会報告を行った。最後に,(3)については,大規模な質問票調査に向けた測定尺度の収集した上で,バックトランスレーションを含む翻訳作業を行った。これらの成果については,令和2年度に実施予定のWebサーベイに盛り込む予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書および実績の概要に記載の通り,平成31年度は先行研究の整理,研究方法の検討,質問票調査の設計および予備的調査の発信を行うなど,研究は概ね順調に進展している。 ただし,平成31年度末から令和2年度前半に実施予定であったWebサーベイについては,新型コロナウィルスの流行にともなう社会情勢の変化が,調査対象の管理会計実践を変容させる可能性がある。これらの事情が研究成果に及ぼすを考慮して,質問票の調整や調査実施の延期を検討しているため,今後の研究の進捗に影響が及ぶ可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に基づき,大規模な質問票調査とそれに関連する研究を行う。以下の研究課題とその概要を示す。 (1)管理可能性原則の適用と組織構成員の行動との関連に関する文献レビュー:経験的な証拠の位置づけをより明確にするために,マネジメント・コントロール・システムとしての管理可能性原則の適用について,歴史的経緯を軸とした文献レビューによって既存の議論を整理する。具体的には,前年度執筆した論文の検討をより精緻化する。 (2)予備的調査の論文執筆:平成31年度に学会報告を行った管理可能性原則と予算管理の利用,マネジャーの行動に関する予備調査について,論文の再検討を行った上で,国内学会誌に投稿する。 (3)質問票調査の実施:予算管理の利用と管理可能性原則の適用に関するWebサーベイを用いた大規模な質問票調査を実施する。またその分析結果を取りまとめ,論文を執筆する。 特に(3)については,新型コロナウィルスの流行にともなう社会情勢の変化が,調査対象の管理会計実践を変容させる可能性がある。調査の延期や,新型コロナウィルスの流行以前を想定した回答を依頼する,または影響の少ないサンプルを選定するなど,質問票調査の内容を調整することを検討している。
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Causes of Carryover |
バックトランスレーションの実施回数が想定より少なく,請求に至っていないため生じたものである。次年度において,本年度支出予定であった費用に充当する予定である。
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