2019 Fiscal Year Research-status Report
持続的社会の実現を支援する環境管理会計システムに関する研究
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19K13867
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
岡田 華奈 大阪経済大学, 経営学部, 講師 (30799929)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境管理会計 / 持続可能な開発 / マテリアルフローコスト会計 / 感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,企業における持続的な社会の実現を支援するシステムとしての環境管理会計の役割を,規範や感情を扱う実践論の議論をもとに検討することである。環境管理会計は,企業の経済と環境の両立を目指すことで企業が自発的に環境活動に取り組むことを推進できると期待されている。一方で,2015年には国連サミットで持続可能な開発目標(SDGs)が制定された。SDGsはゴールであり,その目標達成のプロセスは各組織体に任されている。本研究ではSDGsの実現に環境管理会計が機能するためのメカニズム解明を目指したものである。 環境管理会計現象に対して,SDGsを実際の経営実践で実現するメカニズムに関する研究は萌芽的段階にあり,海外の研究においても理論的整理が十分になされていない状況にある。本年度はまず,近隣分野に対する先行研究に対する文献レビューを行い,先行研究が基づいている経済学や利他主義の重要性など複数の理論的特徴を捉えた。例えばCSR分野では環境社会課題と経済論理の間のテンションの問題が指摘されていた。その際の企業行動としてCSR部門においては企業全全体でのCSR戦略だけでなく,CSR担当者の個人的な経験もまた,影響することが指摘されている。これら研究で採用されている理論は,本研究における持続的な社会の実現の際に採用される環境管理会計の役割に感情が機能するかどうかを分析する際にも有効と考えられる。 また,こうした文献研究と並行して実務におけるCSR戦略およびSDGsに対する企業取り組みについて調査をするためにCSRに関する実務家と学術家の研究会に出席し,実務家との交流を行った。 本年度は当初の問題意識にとらわれずに広く情報収集を行ったため,今後はこれらを集約し,論理的考察を加えて学術的成果としての公表,学会発表等を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先に述べたように,SDGsの実現における環境管理会計の機能についての文献研究は当初の予定通りに進めている。一方で,第二年度以降の経験的研究を行う研究サイトとの交渉を行う予定だが,新型コロナウイルスの蔓延の影響により企業の経済状況が悪化し,研究に協力してもらえない可能性がある。また,物理的に対面型のインタビューや会議への参与観察などが困難となるため研究手法自体も大きく変更しなければならないと想定している。 その場合,研究先の選定,手法の妥当性等を検証する時間を要するため当初の予定よりも時間がかかると予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,文献研究をすすめ,その成果を学会あるいは論文発表として報告したい。その後,明らかにした各理論の特徴およびパースペクティブをもとに,SDGsのゴール達成に取り組んでいる企業を対象とした経験的研究を行う。ここでは,本経験的研究の特徴は環境管理会計実践に着目することである。そのため環境活動の成果を測定する具体的な環境管理会計ツールを用いている企業の会計実践を取り上げる。本研究では複数の企業を対象にSDGs達成に向けた行動に関するインタビュー調査を行い,環境管理会計を通して求められる会計数値と感情や道徳的価値がどのように相互作用して実践が生み出されるのかを明らかにする。また,新型コロナウイルスのような非常事態において目指すべきSDGsのゴールがどう変化したのか,持続可能についての価値概念の変化についても分析を行う。そこで明らかにした知見をもとに企業の行うSDGsの目標達成を支援し,推進するシステムについて検討を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で2019年度末に行うべきであったケース企業への訪問ができなくなったため,研究費執行が当初の想定よりも少なくなった。これについて次年度の使用額とし,可能であればケースへの訪問に用いる。それも困難であり,研究手法が変更された場合には当該手法のため(例:アンケート発送)に用いる。
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