2020 Fiscal Year Research-status Report
会計制度の変革が企業投資行動に与える影響に関する研究
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19K13871
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
譚 鵬 中部大学, 経営情報学部, 講師 (70632280)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際財務報告基準(IFRS) / 国際会計基準 / 投資行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、『商学論究』第68巻第4号で「IFRS導入は日本企業の投資効率を改善した?」と題する論文を発表した。論文は、国際財務報告基準(IFRS) 導入済の日本企業を対象に、質の高い財務報告が、企業の投資行動にどのような影響を与えるのかについて研究した。論文は、日本におけるIFRS 導入企業を過小投資企業群と過剰投資企業群とに区分した上で、IFRS導入が企業の投資行動にどのような影響を与えたのかをIFRS導入のダミー変数とキャッシュ・フローの交差項を織り込んだ投資モデルを使って統計的に検証し、以下の事実を明らかにした。まず、両企業群(過小投資企業群・過剰投資企業群)において投資に対する資金制約がそれぞれ存在することを判明した。次に、過小投資企業群では、IFRS導入は企業投資を高める効果を持つ一方で、過剰投資企業群では、IFRS導入による企業投資向上の効果が確認できなかった。さらに、IFRS導入の影響で、両企業群(過小投資企業群・過剰投資企業群)において、企業の内部資金に対する投資の依存度が低下したことを判明した。本年度の研究は、IFRSの導入によって、情報の非対称性が緩和され、その結果、外部資本提供者から資金調達の環境づくりも次第に整うことになり、企業の内部資金への投資の依存度を改善する効果も現れたことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は昨年度(2019年度)に取り組んでいなかった研究課題に取り掛かっており、具体的には、IFRS導入は企業の投資不足と投資過剰への抑制効果の有無を調査した。さらに、本年度の研究成果として、『商学論究』第68巻第4号(219-235ページ)で「IFRS導入は日本企業の投資効率を改善したか?」と題する論文を公表しており、当初の計画どおりにおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、これまで日本におけるIFRS導入済企業を研究対象とした。しかし、現在日本におけるIFRS導入企業が少ないため、研究データ上に制限がある。本研究で得られた発見を強固なものとするため、今後、最新の分析手法を採用し、研究対象を現在のIFRS導入企業から、IFRS導入企業のマッチング企業まで拡大する予定である。第二に、先行研究では、日本におけるIFRSの任意適用に関する決定要因(規模・収益性・外国人投資家の持ち株比率・海外売上高等)が提示されている。同一業種に属する日本の会計基準の適用企業のなかからIFRS適用企業のマッチング企業を選択したうえで、両者におけるIFRS導入効果を比較・研究する予定である。
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Causes of Carryover |
これまで計画している海外の学会参加は、新型コロナウイルスの発生で、国際情勢の変動が原因で実現できなかった。このことが、次年度への繰越金が生じた主たる要因である。 これまで、本研究はおおむね順調に進展しているため、計画通りに次年度に研究報告を行う予定である。そのため、今後の研究に必要な最新研究資料の購入、研究データの購入・更新、研究環境の整備、学会発表、論文公刊等に研究費を使用する予定である。
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