2022 Fiscal Year Annual Research Report
母語を異にする医師-患者間による医療面接における相互行為の会話分析
Project/Area Number |
19K13887
|
Research Institution | Kanda University of International Studies |
Principal Investigator |
加藤 林太郎 神田外語大学, 留学生別科, 講師 (00803355)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 会話分析 / 成員カテゴリー / 医療面接 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は論文執筆に充てたが、査読の結果掲載には至らなかった。期間内に論文という明確な成果を残すことができなかったことが悔やまれる。研究期間を通じてCovid-19の影響は大きく、予定していたデータの収集や、データセッション、そして研究発表についても予定の大幅な修正が迫られた。そのため、規模を縮小しての研究とはなったが、学会発表と、そこから派生した研究グループの立ち上げ、そしてそこでの研究実践へと、今後会話分析・エスノメソドロジーの分野で研究を続ける上での足場固めが若手の段階でできたのは、将来に繋がる大きな成果となった。 本研究は、母語を異にする医師-患者間で行われる医療面接における相互行為を記述することで、単なる「言語の壁」の先で参与者がどのようにトラブルに対処しているのかを明らかにすることを目標に始めたものであった。本研究で扱ったデータでは相互行為中に医師が自分の言語能力に言及しながら中国人模擬患者に漢字を見せ、「これ合ってる?」「中国語でもこれ結核っていうんですか」と質問をする場面があった。これによって医師は中国語非母語話者という自らのカテゴリーを前景化させ、患者には中国語母語話者カテゴリーが適用される。それを資源に参与者は修復の連鎖を遂行していた。このことは、医療面接という制度的場面にあっても、参与者は時に医師や患者という場面に依拠したカテゴリーではなく、自分たちの持つ言語資源に依拠したカテゴリーを相互行為の中で前景化させ、それを資源として会話上のトラブルに対処しようとする様子が見られた。医師と患者のコミュニケーションについては、その権力の非対称性を前提とした研究が多くあるが、実際にはその非対称性を調整することで相互行為を遂行している一端が記述された。これを手掛かりに今後は相互行為における権力の調整を中心的テーマに据えて研究を継続していく所存である。
|