2019 Fiscal Year Research-status Report
過疎地域に住み続ける権利を回復する地域循環型福祉経済の構築に向けた実証的研究
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19K13891
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Research Institution | Kinjo Gakuin University |
Principal Investigator |
橋川 健祐 金城学院大学, 人間科学部, 講師 (40632691)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 過疎地域再生 / 地域循環型経済 / 福祉経済 / 社会福祉法人 / 労働統合型社会的企業 / 就労継続支援A型事業 / 資源開発 / 質的データ分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生産性と効率性に偏重する新自由主義的政策の裏側で、人口減少に歯止めがかからず生活環境の悪化と生活機能の低下に直面し、住み続ける権利を侵害、ないし脅かされている過疎地域において、過疎地域再生のための要件、並びに方法論と政策のあり方を示し、持続可能な地域循環型福祉経済の構築を図ることで政府によって侵害されてきた過疎地域に「住み続ける権利」を回復することにある。中でも、社会的弱者、就労困難層と言われ、より同権利を侵害ないし脅かされかねない障害者に焦点化し、障害者の就労の場としての労働統合型社会的企業(就労継続支援A型事業所)、とりわけセーフティネットの機能を果たすべく、法的に税制優遇措置を受けている社会福祉法人が運営するそれを対象として事例研究を進めてきた。 事例研究では、米澤旦(2011)の社会的企業の三極モデル(市場、再分配、互酬)を基に地域社会との関連性を加味した橋川(2016)の分析枠組みを用いて、持続可能な事業経営に関する静態的な分析に加え、事業所設立から現在に至るプロセス研究を主軸においた動態的な分析を志向してきた。また、実際にそこで働く障害当事者らにもインタビュー調査を実施することで、就労以前の生活、また当該事業所で就労することでどのように過疎地域での生活に変容をもたらしたか、またそれらが住み続ける権利を保障することにつながっているのか、福祉の生産モデルの枠組みを用いて分析を行なってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、三つの地域において参与観察及びインタビュー調査による事例研究を進めてきた。三つの事例は、(i)社会福祉法人よさのうみ福祉会が運営する「リフレかやの里」(京都府与謝郡与謝野町)、(ii)社会福祉法人白鳩会が運営する「花の木ファーム」(鹿児島県肝属郡南大隅町)、(iii)社会福祉法人カナンの園が運営する「カナン牧場」(岩手県二戸郡一戸町)である。三つの事例は、いずれも過疎を課題とする地域において、労働統合型社会的企業が事業を実施しており、市場収益の割合が全体の5割を上回り、かつ、地元地域への貢献を通して地域経済の一翼を担っている。 調査では、3つの事例先に伺い、A型事業所において雇用契約を結んで働く障害者(もしくはそのOB)合計26名、役職員合計8名、事業所の外部の関係者合計16名に半構造化インタビューによる調査を一通り実施し、データ収集に努めた。ドキュメント資料を含め、必要なデータを収集することができた。 現在、インタビュー調査によるデータを中心に佐藤郁哉(2008)の質的データ分析法によるセグメント化、コーディングの作業、コードマトリックスの作成等のデータの分析を進め、査読論文の投稿に向けた論文執筆作業を行なっているところである。 そのほか、他研究会やフォーラム等への参加、意見交換を通して、先行研究、また他の実践事例の知見の収集と蓄積に尽力した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、日本を含む世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年度、とりわけ上半期に現地調査等を実施するのは、極めて困難な状況にあると言わざるを得ない。 幸運にも、当初の予定とは時期を入れ替え、先に事例先のデータ収集に努めたこともあり、2020年度上半期はその分析と、論文へのまとめ、投稿に注力したい。同時に、データの補足には、遠隔によるやりとりを中心にしながら、出張等が緩和された時期に再訪し、再調査等の実施を行う。 また、2019年度は不十分であった海外の先行研究の文献収集、事例の収集と整理を進め、上記と同じく出張等が緩和された時期に現地調査を実施し、その知見を紀要論文等にまとめたい。 最終的な研究成果は、報告書にまとめるとともに、年度内にエントリーできる学会等にエントリーし、またその他、可能な限り査読の有無にかかわらず論文投稿し、社会への発信に努めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大により、2、3月の出張に対して、先方との調整の結果取りやめになった先が生じた事による。 2020年度、上記ウイルスが終息次第、改めて調査に伺うことにしたい。
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Research Products
(1 results)