2019 Fiscal Year Research-status Report
歴史遺産の保存と観光資源化における政治過程の比較都市社会学
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19K13892
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
森久 聡 京都女子大学, 現代社会学部, 准教授 (20736649)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 観光開発 / まちづくり / 歴史的環境 / 社会層 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,歴史遺産が観光資源として活用される時,歴史遺産がおかれた社会的文脈やそれが表現する歴史的意味をめぐって立ち現れる社会的緊張を解明することである。また,本研究では経済波及効果や産業振興といった側面で捉えがちな「地域活性化」論に対し,社会学的な意味における「地域活性化」を明らかにすることを第2の研究目的とする。 今年度は,以上の研究目的を達成するために,鞆の浦と小樽市の調査を行った。 鞆の浦では,令和元年度は(1)市民活動として歴史遺産の保存に取り組む市民団体と行政および公的機関へのヒアリング調査を実施した。また,(2)平行して文書資料の収集をおこない,年表作成に取り組んだ。 (1)については,長年にわたり歴史遺産の保存に取り組んできた市民団体だけではなく,重要伝統建造物群保存地区への指定に伴って組織された住民組織にもヒアリングを実施できた。また,近年,鞆の浦に移住してきた若年層世代や埋め立て・架橋計画に賛成していた住民など,これまでヒアリングできていなかった社会層へのヒアリング調査を行った。 (2)地元の地方新聞・全国紙および行政資料,行政訴訟の裁判資料を用いて,埋め立て・架橋計画をめぐる住民論争の経緯を主体別の年表形式に編纂した。さらに鞆の浦のまちづくりに関する文書資料を収集し,データベース化にむけた基礎的な作業を継続した。 小樽では,比較調査のための準備として(1)市民活動として観光イベントを実施する市民団体にヒアリング調査を行った。また(2)その観光イベントについて現地スタッフとして参加し,参与観察調査を実施した。それぞれの調査を通じて調査対象者との信頼関係の構築がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鞆の浦については,これまでヒアリング調査を実施することができなかった(調査拒否されていた)社会層へのヒアリング調査が実施できた。また,近年,調査対象地への移住が目立つ若年層世代へのヒアリング調査も実施できた。このように調査対象者を拡張できたのは大きな成果である。小樽については,より詳細な現地調査を実施するための調査対象者との信頼関係の構築ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鞆の浦では,今回の調査で拡張した調査対象者をきっかけに同じ社会層に属する対象者を発掘し,複数人のヒアリング調査を実施することで該当する社会層の傾向をより正確に把握できるようにしていきたい。また小樽では,比較調査のための下準備が順調に進んだので,よりより詳細な現地調査を実施していきたい。
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Causes of Carryover |
予定よりも効率的に研究活動ができたことと学内助成金による研究助成も活用できたため,物品・人件費・旅費など全体的に今年度の費用が抑えられた。
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