2020 Fiscal Year Research-status Report
「男性不妊」の男性学―男性医療をめぐるメディア言説の研究―
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19K13894
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
倉橋 耕平 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (40783163)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 男性不妊 / 男性学 / ジェンダー / 医療 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、男性不妊に関連して、医学知識を動員して男性性を回復・復権させるメディア言説を分析することで、男性学が抱える課題を克服し、現代社会におけ る男性性の規範的な在りようの一旦を解明するものである。これをめぐって、一般書・雑誌・エッセイ等にあらわれる医療言説がどのように男性性の回復を志 し、男性性の再強化を正当化してきたのかを解明する。二年目となる本年度は、新型コロナウイルス蔓延により、予定していた学会の中止、資料収集の一時停止などの影響があり、かなり限定的な研究活動となった。そのため、文献・資料研究が中心となったが、それに関してはすでにかなりの部分を終え、公表をする準備に入っている。具体的には、著者本人の体験を語ったエッセイでは、性欲自然主義(性欲を本能化する言説)を信奉する著者は、症状が精索静脈瘤(精子の運動率が下がる症状)の場合、性的不能を感取しやすく、生殖機能と区別して考えることが難しいといった傾向がある。以上は従来の男性学でも指摘されてきたことだが、それと同時に精索静脈瘤の手術による回復が、男性性の回復と分かち難く結びついていることがわかった。すなわち、この不分離が医療を通した男性性回復言説に結実する。他方、上記のメディアに加えて、この数年の間に「不妊」を題材とするマンガが電子版を中心に増殖しており、そちらの蒐集に取り掛かる必要性が生まれ、実施を開始した。また、この間に自分自身が男性不妊の当事者であることが判明した(精索静脈瘤)。そのため、当事者研究の手法を検討する必要が生まれており、若干の方向性の見直しの検討が必要となる部分があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの影響により、前年度に発見した課題(医療従事者への補助的なインタビュー)を追加で行う予定であったが、医療機関が対象であるゆえ、困難も生じている。また、資料収集範囲が広がったこともあり、当初の予定より少し遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、資料分析を進める。加えて、医療従事者(とくに男性不妊に関する著作を発表している医師)への補助的なインタビューも行う必要がある。それらを踏まえ、アウトプットを意識して研究を推進する。
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Causes of Carryover |
予定していた学会出張と計量研究に関わる人件費の使用が遅れたことが繰越の理由である。その分を次年度に回し、そのために使用する。
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