2022 Fiscal Year Research-status Report
少子社会における出生順位と職業達成の関連メカニズムの実証的解明
Project/Area Number |
19K13896
|
Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
苫米地 なつ帆 大阪経済大学, 情報社会学部, 准教授 (90782269)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 職業達成 / 出生順位 / きょうだい構成 / 社会階層 / 家族 / 親子関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、きょうだいの中で何番目に生まれたか(=出生順位)によって個人の職業達成に違いがみられるのはなぜなのか、そのメカニズムを社会調査データの計量分析から明らかにすることである。具体的には、家族内での経済的および非経済的な資源の配分状況や、家族内での役割意識・役割期待が出生順位により異なっているかどうか、それらが職業選択に影響を与えているかどうかを検証する。この検証をとおして、個人が選択することのできない生得的な属性に起因する不平等の実態を明らかにするとともに、社会階層や家族を対象とする実証的研究のさらなる発展に寄与することができると考える。 2022年度は上記の目的の達成に向けて本調査の準備を進めた。具体的には、本調査で尋ねるべき項目や調査対象者のサンプリング方法について再度検討した。また、全国規模で実施されている社会調査データをもとに、職業達成のなかでも特に家業の継承に着目し、それに対する家族構造、出生順位の影響についての計量分析をおこなった。分析の結果、家業の継承を希望するかどうかに対しては統計的に有意な出生順位の影響はみとめられなかった。他方で、実際に家業を継承しているケースについて探索的な分析をおこなってみたところ、長子や長男が相対的に家業を継承していることが明らかになった。そのほか、家業の継承を希望するかどうか、実際に家業を継承しているかどうかには男女差があり、男性の方が家業継承の希望を抱きやすく、実際に家業を継承している場合も多かった。これらのことから、出生順位による職業達成の差異について検討するにあたっては、出生順位と性別を組み合わせたときの効果にも注目するべきだと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の目的を達成するための量的調査を2022年度中に実施する予定であったが、実施できなかったため。 調査が実施できなかったのは、予備調査の結果を受けて対象者のサンプリング方法を再検討することになり時間を要したこと、自身の妊娠・出産にかかる体調不良や育児休業の取得などで調査の実施に向けた研究および準備の時間を十分に確保できなかったことが理由である。
|
Strategy for Future Research Activity |
予定していた調査が実施できていないため、まずは調査をすみやかに実施する。調査を実施した後は当初の計画よりも短い時間で成果公表まで進むために、予備調査を実施したときの経験を生かして、なるべくデータのクリーニングやコーディングにかかる作業を効率的におこなう。また、調査の成果を十分に発信することを念頭に、学会発表や論文執筆を計画通りに進められるよう努力する。
|
Causes of Carryover |
2022年度内に調査を実施する予定でいたためその調査費用と調査の準備に関する費用が計上されていたが、調査の設計の再検討や自身の出産などにより調査の実施に至ることができず、次年度使用額が生じている。生じた次年度使用額は調査やそれに関連する費用に充てるとともに、研究成果をすみやかに発信するために使用する。
|