2022 Fiscal Year Annual Research Report
被災地の復興と大量死の現場の再建に関する集合的記憶の研究
Project/Area Number |
19K13897
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
濱田 武士 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 都市文化研究センター研究員 (60814465)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 平和 / 被害の記憶 / 広島 / 長崎 / 沖縄 / 平和公園 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度(2022年度)の研究成果は、大きくは2つである。第一の成果は広島での現地調査を実施し、広島市民球場の建設経緯や広島社会での位置づけに関する資料収集を行ったことである。第二の成果は長崎での現地調査を実施し、長崎の原爆のほかにキリスト教者や朝鮮半島出身者の受難など総合的な被害に関する資料収集を行ったことである。 これらは、戦後復興のなかであらわれてきた平和関連施設に着目し「平和な時代」の持続を明らかにしようとする本研究にとって、多様な被害が施設やモノとして実際に存在する/存在しない形で記憶/忘却されていることが確認され、この点で「平和な時代」の持続に資するもの/資さないものという観点から把握するうえで意義があった。またこれらは、広島、長崎、沖縄の平和公園と諸施設の建設経緯から現在に至るまでのプロセスを探る研究実施計画では調査対象にはしていなかったものの、「平和」が実は多様な施設を基盤に成立している実体を(再)確認する点で重要であった。 研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、広島の広島平和記念公園、長崎の平和公園、沖縄の沖縄県営平和祈念公園の公園自体の建設を中心にそれぞれを構成する資料館やモニュメントの建設背景等を公文書、各団体の記録、新聞記事等の資料収集を行いデータ整理を行ったことである。 これは、先述した「平和な時代」の持続を明らかにしようとする本研究にとって中心的な対象事例であり、現代という時代との関連でまとめられた成果は、「平和な時代」の持続を考察するにあたって有用である。またこれらは、先述した研究実施計画の内実に相当しており、例えば人類が破局に向かうような出来事が生じるたびに記憶の継承が問題になる昨今に対して、多様なアクターの被害への向き合い方を探る本研究は、平和が政治的経済的のほかにも様々な要因から社会的に規定されるという示唆を与える点で重要である。
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