2019 Fiscal Year Research-status Report
福島原発事故発生後の森林資源をめぐるコミュニティ・ガバナンスに関する実証的研究
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19K13901
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
辻 岳史 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 研究員 (00835853)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / コミュニティ・ガバナンス / 政策過程 / 森林再生事業 |
Outline of Annual Research Achievements |
福島原発事故にともなう放射能汚染の被害をうけ、避難指示区域の指定を受けた福島県内12市町村(以下、「旧避難指示区域」と表記)では、事故発生後、森林資源の管理と利活用に係る困難な状況に直面している。その反面、事故発生後の森林資源の管理と利活用にかかる期待は大きい。福島県は事故後に木質バイオマス安定供給指針を示すとともに、間伐等の森林整備と放射性物質対策を一体的に行うふくしま森林再生事業を展開し、同事業で産出される木材の利活用先として木質バイオマス発電施設を位置づけた。さらに、政府が固定価格買取制度の対象を拡大したことに伴い、間伐材を活用したバイオマス発電事業を計画する事業者が県内に台頭している。森林資源の管理と利活用に関する制度の変化、新たなステークホルダーの台頭により、従来の森林資源に係るコミュニティ・ガバナンスは再構築を迫られている。 本研究の目的は、旧避難指示区域における原発事故前後の森林資源の管理と利活用に係るコミュニティ・ガバナンスの実態と、森林資源の管理と利活用に係るステークホルダーの課題認識・ニーズを明らかにすることである。 令和元年度は、原発事故発生後に避難指示区域において実施されている森林再生事業である里山再生モデル事業とふくしま森林再生事業に焦点をあて、行政計画の分析、政策担当者(復興庁・環境省等)へのインタビュー調査を実施し、避難指示区域における森林施業の再開、里山の利用再開に関する政策課題を明らかにした。さらに、飯舘村を事例対象地域に設定して、同村において2011年3月11日~2019年3月31日に発行された地域資料(新聞記事、村広報、村議会広報、村議会議事録、村行政および村議会が省庁等に提出した要望書・提案書・協定書等)の分析を通じて、飯舘村における木質バイオマス発電・熱利用施設の導入に係る政策過程および、団体・組織間の利害調整過程を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度は、飯舘村を事例として、(1)森林資源の管理と利活用に関する政策過程の分析(2)森林資源の管理と利活用に関するステークホルダーのニーズ分析を実施する予定であった。(1)に関しては予定通り実施することができ、飯舘村の森林資源の管理と利活用に係る年表を完成させることができた。 しかし、地域資料の収集と分析に時間を要したこと、2020年2月以降に発生した新型コロナウイルスに係るパンデミックの影響により飯舘村におけるフィールドワークの実施が困難になったことを背景として(2)に関しては省庁(復興庁・環境省・林野庁)、福島県の政策担当者に対するインタビュー調査の実施に留まり、当初計画していた飯舘村内の政策担当者へのインタビュー調査、森林組合等の地域組織へのインタビュー調査の実施ができなかった。以上をふまえて、当初の研究計画の遂行がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は当初計画していた飯舘村の政策担当者へのインタビュー調査、森林組合等の地域組織へのインタビュー調査を実施する。インタビュー調査にあたっては、(1)森林資源の管理と利活用に関する政策過程の分析で作成した年表を積極的に活用する。加えて、当初の研究計画で実施を予定していた飯舘村の森林資源の管理と利活用に関する住民および森林所有者を対象とした意識調査の設計・実査を行う。
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Causes of Carryover |
令和元年度は飯舘村内の政策担当者へのインタビュー調査、森林組合等の地域組織へのインタビュー調査の実施を予定しており、当該調査のデータ整備(インタビュー音声データのテープ起こし)で予算を活用することを計画していた。しかし、2020年2月以降に発生した新型コロナウイルスに係るパンデミックの影響により飯舘村におけるフィールドワークの実施が困難になったことを背景として、インタビュー調査の実施をすることができず、次年度使用額が発生した。次年度は、上記インタビュー調査の実施を計画しており、次年度使用とした予算分を使用する見込みである。
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