2019 Fiscal Year Research-status Report
昭和戦前期におけるメディア議員と世論形成に関する歴史社会学的研究
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19K13904
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
白戸 健一郎 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80737015)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メディア / 世論 / 政治 / 公共性 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昭和前期におけるメディア議員のなかで特に、東京朝日新聞社の記者、その後、九州日報社長、東方時論主筆などをつとめ、1920年に衆議院議員に当選し、以後1945年までメディア界と議会において活躍した中野正剛に着目して研究を進めた。特に、中野正剛の選挙戦を対象に、中野がいかにメディアを利用し選挙戦を戦ったのかを明らかにし、その特質をあぶり出した。これは「昭和前期の中野正剛における選挙とメディア」として『メディア史研究』47号、2020年に投稿し掲載された。1909年に早稲田大学を卒業した中野正剛は東京朝日新聞社に入社し、筆名を高めた。以後も言論人としてメディア上で大いに活躍する。議員になって以後は、弁論術を鍛え、雄弁家の側面も評価された。選挙戦における中野の演説会は新聞紙にとっても重要なコンテンツとなった。中野は自身の政見を伝達する筆力と演説力に長けており、中央言論界でも評価が高かったことがさらなるメディア露出を促し、かつ自身が選挙区の伝統的新聞社を所有していたことも、自身に有利な情報環境の構築に寄与した。中野正剛は、メディアの論理と政治の論理を架橋し、自身の政治的影響力を高めた政治家である。特に、普通選挙という有権者が飛躍的に拡大し、メディアが重要な意味を持つと考えられた時期に、中野がメディアを通して作り上げようとした「世論」は昭和期におけるメディアと政治と世論形成過程の三者構造を解明しようとする本研究において重要な事例になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は2019年8月31日に立教大学で開催されたメディア史研究会において「昭和期の中野正剛における選挙とメディア」を発表し、それをリライトしたものを『メディア史研究』47号、2020年に査読付き論文として掲載された。今後の研究をすすめる上でも重要な研究であるため、順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は中野正剛の1930年代後半の政治活動とメディア活動の両面を捉えつつその関連を解明していく。特に、対外硬派として評価される中野の外交論と論壇での活躍、また、その関係について解明したい。さらに、武藤山治などの他のメディア政治家や新聞記者と議会の制度的関連を調査しつつ、それが「世論」形成に担った役割を解明していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスの影響により研究費使用の調整がうまくできなかったため。
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Research Products
(2 results)