2021 Fiscal Year Annual Research Report
大学卒業生の職業移動に関するライフコース研究―能力と制度に注目して―
Project/Area Number |
19K13905
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
吉岡 洋介 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (90733775)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 職業移動 / 大学生 / パネル調査 / コーホート / 自尊感情 / 交互作用効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「大学生の(人間の行為力のような)自己概念や個人特性は卒業後の職業移動に影響するのか?亅、「その影響は制度的文脈に左右されるのか?」という2つの問いを検証することである。これらを検証するために、web調査会社のモニターである大学4年生に自己概念や個人特性を調査し、卒業後3年目までにさらに2度同じ個人を追跡するパネル調査を実施した。また、異なる2つの卒業コーホートで分析結果を比較することで制度的文脈の影響を明らかにした。制度としては大学生の就職活動についてのガイドラインである「採用選考指針」に注目した。いわゆる「就職活動の後ろ倒し」をはじめて経験した2016年卒業予定コーホートと制度変更が落ち着いた2018年卒業予定コーホートで分析結果を比較した。 2016年卒業コーホートは、2015年から2019年までのパネル調査で必要な変数に欠損値のない75名が分析対象となった。また2018年卒業予定コーホートは、2017年から2021年までのパネル調査で必要な変数に欠損値のない82名が対象となった。従属変数は卒業後最初の仕事の勤め先からの離職の有無とし、性別などの基本的な変数を統制したうえで、約40ある自己概念・個人特性が離職の発生に及ぼす影響を明らかにした。2つのコーホートをマージした157名のパネルデータの分析により得られた成果は以下の通りである。(1)約40ある自己概念・個人特性のうち5つ程度しか有意に卒業後の早期離職の有無を予測しなかった。(2)それらにコーホートによる交互作用効果はみられなかった。 個人の資質と職業キャリアの関連をデータで観察することは、一般にいわれているほど、容易ではない。ただし、多変量解析では、複数の「自尊感情」項目で将来の離職を抑制するという影響がみられた。今後は、潜在変数を導入した共分散構造分析を行い研究を進める。
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