2019 Fiscal Year Research-status Report
都心社会のコミュニティ形成における既存住民サイドのキーパーソンの役割
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19K13909
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
田中 志敬 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (80612407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 都心回帰 / コミュニティ形成 / キーパーソン / マンション / まちづくり |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、既存の記録の整理(事前の参与観察データと地元の広報誌等)と活動者へのヒアリングを通じて、京都市都心部の対象地区の活動展開の実態調査と内容分析を行い、①初動期②実践期③成熟期の3区分ごとに整理した。 ①初動期は、概ねマンションが増加する2000年前後に、まちづくり組織が結成され活動が始まっていることがわかった【非日常的な課題対応体制への展開】。つまり地域でのマンション居住者の急増は、日常的な地域の課題対応体制(自治連合会や各種団体等の地域住民組織の日常活動)では対処しきれなかったことを示している。 ②実践期は、2003年前後から2010年前後に、活動内容が増えていることが明らかになった。これは結成後数年間は、有志の地域非公認団体として始まる地区もあり、当初から地域公認団体として位置付けられていた団体も含めて、活動の方向性の模索とその地元合意形成に多大なコストを割いていたためと推察できる。その合意形成を経たのちは、地域課題に応じた多様な活動の展開も確認できた。 ③成熟期は地区差があるが、概ね活動開始から10年が経過した2010年前後から活動の収束・休止が生じている。特にリーダー層の世代交代を契機に、方針転換や負担軽減に転じ、新規の課題対応を抑制し、他の地域住民組織と同様に日常活動のみ残存させているケースも見られる【日常的な課題対応体制への回帰】。 加えて今年度は、地区活動に影響を及ぼすと思われる地区の歴史的背景や、社会統計の分析による地域変化に関する調査、京都市の政策変遷の調査も行なった。その結果、京都市の開発抑制型の政策とコミュニティー支援型の政策が出されたタイミングと対象地区の活動の収束が(若干の時差はあるが)ほぼ同時期的であることも明らかになった【地域課題の行政課題化と公的対応による地域対応補完】。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナの流行により、後半のヒアリングをすることができなかったが、事前の参与観察資料や地域の広報誌等の既存資料を用いた分析で、活動年表作成については一定程度補うことができている。また追加調査として、対象地区の特徴と変化に関する調査や対象地区に影響を与えた制度変遷に関する調査も行なっているため、総合的には概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究は、昨年度把握した各地区の活動展開に沿って、その活動詳細や動くに至った経緯等を補足しつつ、キーパーソンの果たした役割を明らかにしていく。この研究では、地域住民組織の担い手層への再度のヒアリングと外部支援者へのヒアリングの実施が必要となる。しかし、その対象者には年配者も多く、新型コロナへの感染リスクの回避の観点から、可能な限り年度の後半や次年度に調査時期を遅らせるほか、場合によっては、郵送アンケートや電話及びメールでのヒアリング調査の実施による非接触型の代替調査や、参与観察資料や地域で入手した資料のドキュメント分析等の補完的調査を併用させながら進めていく。
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