2020 Fiscal Year Research-status Report
The global context of post-Fukushima activism: Exploring an 'embodied' political philosophy in the crisis of democracy
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19K13911
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田村 あずみ 滋賀大学, 国際交流機構, 特任講師 (80781088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会運動 / 原発 / 3.11 / 政治思想 / 身体性 / 情動 / プレカリティ / 民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、新型コロナウイルス感染症蔓延に伴い、国内外の聞き取り調査が実施できなかった。一方のアウトプットでは、昨年度の研究結果を含む単著を2020年6月に刊行し、報告を国際学会で1回、また研究会や一般向け講演会で5回行なうなど充実していた。これらでは社会運動実践者、運動に批判的な市民、社会運動研究者、政治学・哲学・文学研究者と広く議論を行えた。海外調査の困難により、今後国内調査の比重を高める方針であり、報告会で得た知見をもとに文献調査を進めた。具体的な成果は下記の通りである。 (1)身体性の政治と情動についての文献調査:社会運動の特徴である情動と政治の接続について、報告会等の議論をもとに文献調査を進めた。情動と政治の接続が分断を生むか連帯を生むかといった単純な議論を乗り越え、3・11後の社会運動の言説の中から「倫理的な(連帯を可能にする)情動」を見つけるという方針である。 (2)身体性の政治と「言語」に関する文献調査:6月に刊行した単著では、リベラルの普遍的な政治言語・概念が、市民の政治的無力感や反知性主義に応えられていないと指摘した。これについて運動非参加者だけでなく参加者からも共感を得た。身体性に基づく新たな政治言語の可能性について、3・11後の運動以外の場(それ以前からある運動や、デモ以外の場)における言説とも比較対照を行うこととし、60年代の学生運動の文献再調査、福島の被災者の記した文献の調査を行なった。 (3)文明論・責任概念に関する文献調査:原発事故後の社会運動は、文明論や科学論、さらに複雑な現代社会における責任の所在といった議論を含む。これに関して、人新世・新唯物論系の国内外の哲学思想の文献調査を進めた。また反原発運動と類似した示唆を持つ反公害運動でどのような語りがされているかの文献調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の世界的な蔓延に伴い、国内調査・海外調査ができなかったことが原因である。とくに海外調査の目途が立たず、研究アプローチを再検討する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
メキシコを予定していた海外実地調査については、感染症の状況を鑑みて2022年度に再延期、または国内調査に変更を検討する。仮に海外調査が今後も困難な場合、国内調査をメインに据えて「身体性の政治」概念を構築し、論文と学会発表で海外に向け成果報告を行い、今後の共同研究への足掛かりとしたい。2021年度については、感染症の状況を見ながら、福島での聞き取り調査、また「3・11前」からの運動のうち、反原発運動と共通する文明論的示唆や責任概念の問いを持つ国内の運動において、聞き取り調査を行いたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の蔓延を受けて国内外の実地調査を延期したこと、また報告会や学会の多くがオンラインだったことから、旅費をほとんど使用しなかった。 物品費の未使用が大きいのは、海外調査の困難と、国内報告会で得た知見から、研究アプローチの再検討を行った結果、予定していた関連書籍を購入しなかったためである。また必要な書籍購入は、別の研究費を使用したこともあり、物品費の使用額が予定よりかなり少なくなった。
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