2022 Fiscal Year Research-status Report
The global context of post-Fukushima activism: Exploring an 'embodied' political philosophy in the crisis of democracy
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19K13911
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田村 あずみ 滋賀大学, 経済学系, 准教授 (80781088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会運動 / 原発 / 3.11 / 身体性 / ポストヒューマニズム / 情動 / 人新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は国内調査の実施と、3.11後の反原発政治思想をポストヒューマニズムと結び付けた報告および英語論文の執筆に取り組んだ。 ①国内調査 近代社会のあり方そのものが生み出した悲劇という点で、福島原発事故と比較されることも多い水俣病被害の実態を知るため、熊本県水俣市にて資料調査を行ったり、関係者の話を聞いたりした。水俣病運動の歴史を学ぶとともに、患者と住民の対立、企業と市民の関係、現代社会における発展の意味、生のあり方など、「3.11後」と共通する課題への知見を得た。 原子力産業を地域振興の基盤に据えている青森県六ケ所村を訪問した。六ケ所原燃PRセンターを見学し、原子燃料サイクルへの知見を深めた。また次世代エネルギーパークの国際核融合エネルギー研究センター、青森県量子科学センターなどを見学し、(地域)社会と先端技術の関係性について調査した。 ②反原発思想とポストヒューマニズム 人新世の危機において、近代の自律的主体とは異なる新たな政治=倫理的エージェンシーを模索するポストヒューマニズムの検討を行なった。主に注目したのは他者に「晒され(Exposed)」た生を政治の起点にするステイシー・アライモ、さまざまな異種が絡まり合うことで生まれる創造を重視するアナ・チン、そうした絡まり合いを独立した個々の相互作用(interaction)でなく、未分化状態における「内部作用(intra-action)」と捉えるカレン・バラードなどである。こうした思想を、前年度に実施した福島の反原発アクティビストのインタビューと比較しながら、「3.11後」の政治=倫理思想の言語化を試み、学会報告を行うとともに、英語論文を執筆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度~22年度のコロナ禍に海外調査が困難となったため、国内調査を中心としながら海外での報告と海外研究者との交流を進める方針に転換したため、その準備等で研究は全体的に遅れた。そのため、研究を一年延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度末に執筆した英語論文について、さらに考察を深め、国内外の学者との議論を行いたい。また研究の最終年度であり、これまでの研究成果を社会貢献へと繋げたい。具体的には、原発の問題において、利害関係が複雑に絡み合うステークホルダーによる「内部作用(intra-action)」としての対話を模索することで、人新世の危機における政治=倫理思想の形を模索したい。
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Causes of Carryover |
2020年度から2022年度に海外調査を実施せず、国内調査に切り替えたため差額が生じた。また物品費は他予算からも支出した。今後は海外での報告や、研究成果の社会貢献などで使用する予定である。
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Research Products
(1 results)