2023 Fiscal Year Annual Research Report
The global context of post-Fukushima activism: Exploring an 'embodied' political philosophy in the crisis of democracy
Project/Area Number |
19K13911
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
田村 あずみ 滋賀大学, 経済学系, 准教授 (80781088)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 社会運動 / 原発 / 3.11 / 身体性 / 人新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の成果としては、①震災から10年以上が経過した日本社会の現状と、筆者のこれまでの研究をもとにした社会実践への参与研究、およびその報告、②研究の発展に向けた海外研究者との研究会開催や連携の構築、があげられる。 ①について、311後の反原発運動も10年以上が過ぎ、新たな局面を迎えている。東京で毎週行われていた抗議も終了し、反原発運動が社会的に見えにくくなる中、2023年夏には福島第一原発の事故処理水の海洋放出が始まり、反原発派市民にとっては、「声が届かない」もどかしさや失望を感じる社会状況となっている。こうした中、反原発派市民が、原発を推進してきた科学者や政策決定者と対話を行う試みが始まっている。筆者はこの試みに参加しながら、「絶望を経験した人々が見出す政治の形」を考察し、2024年3月に国際学会での報告を行った。 ②について、まず他国の災害研究者と意見交換し、人新世における民主主義的な知の形を検討した。不確実な災害リスクに対しては、専門家の知識だけでは不十分で、政策決定過程に市民を巻き込むことが重要だ。しかし市民参加の「場」だけ作っても、専門家と市民の間の権力関係を見直さなければ、結局は専門知の押し付けに終わってしまう。研究会ではこうした懸案を共有した。また別の研究会では、原発に象徴される「人新世の危機」と科学の役割を考察した。具体的には、人新世の危機に対する運動の筆頭格である気候正義運動と、自然を制御することで危機を解決しようとする科学(ジオ・エンジニアリング)の背後にある思想を読み解くことが鍵になるとの考えのもとに、現在も研究が進行中である。 これらの試みは、研究期間を通じて行ってきた311後の市民運動者のインタビュー調査を基にした社会実践としての意義を持つとともに、今後の研究の新たな展開に向けた準備となるものであった。
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