2021 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の自然科学方法論における《帰属=対応づけ》概念の社会科学に対する意義
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19K13912
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梅村 麦生 神戸大学, 人文学研究科, 講師 (70758557)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 帰属=対応づけ(Zuordnung) / 帰属(attribution) / 帰属=帰責(Zurechnung) / 20世紀前半の自然科学方法論と社会科学方法論 / オーストリア社会学史 / 初期現象学的心理学と現象学的社会学 / 社会学的言い訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年度および最終年度である本年度は、前年度までの研究の進展を踏まえて、フリッツ・ハイダーが知覚心理学と社会心理学の分野で自らの研究基盤を形成し、やがてアメリカへと移住するに至るまでの同時代オーストリアにおける、自然科学と社会科学の関わりについて検討をするため、19世紀末以降のオーストリアにおいて社会学がどのように成立、発展したのか、またその中で大きな変化をもたらしたとされる社会科学者たちの移住・亡命について、研究をさらに進めるとともに、関連する論考の翻訳を行なった。
その中で明らかになったこととして、帰属概念史における自然科学から社会科学への「帰属=対応づけ」 概念の転用の試みと同じく、オーストリア初期社会学史においても、社会有機体説や社会進化論などに代表されるように、自然科学の知見を社会科学に導入する試みや、自然科学的な法則を社会の領域に見出そうとする試みが多く行われたものの、そのままの形で社会学に今日に残るものは継承されず、すでに社会科学の分野で研究が進んでいる段階にあっては、自然科学から社会科学への転用はあくまで「必要な変更を加えて」行われなければならないことが示されていた。またオーストリア社会学は、第二次世界大戦以前は「社会調査なき社会学」と呼ばれて理論研究が中心的であったが、隣接分野の心理学などで調査手法、統計手法が発展し、それが社会科学者たちの亡命・移住にともなってアメリカで開花し、第二次世界大戦後にそれが逆輸入されて受け入れられていった、という経緯は、ハイダー自身のキャリアや受容史とも重なっている。
加えて、2年度目に引き続き、本研究で提起している「帰属概念の構成主義的転回」(二次の構成概念としての帰属概念への転回)を示す例として、「社会学的言い訳」批判の論争を取り上げ、社会学的帰属に対する批判とそれへの応答をめぐる論争として検討を行なった。
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