2019 Fiscal Year Research-status Report
出入国管理政策を通じた冷戦と国民国家形成に関する比較歴史社会学的研究
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19K13913
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Research Institution | Institute on Social Theory and Dynamics |
Principal Investigator |
朴 沙羅 特定非営利活動法人社会理論・動態研究所, 研究部, 研究員 (40726973)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 出入国管理政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は査読付き論文が1本掲載され、執筆を分担した研究書が刊行された。また神戸大学の紀要に翻訳を1本、書評論文を1本投稿した。 まず2019年4月に、日本における出入国管理政策の裁量権の大きさの歴史的起源を論じた論文が、『共生社会の再構築I:シティズンシップをめぐる包摂と分断』に「イデオロギーとレイシズム:占領期日本の非正規移住者をめぐる入管行政の裁量権をめぐって」として掲載された。この論文では、現在も問題とされている出入国管理行政の裁量権について述べたが、これは戦後の出入国管理政策の成立過程について、これまで明らかになっていることを整理し、本研究に直接的に関係するこれまでの調査結果をまとめたものである。出入国管理行政の裁量権の問題点については、これまで政治運動や裁判、あるいは法学において議論されてきたが、社会学的には議論されてこなかった。この論文では、敗戦直後に生じた朝鮮半島からの非正規な移住の管理と裁量権の拡大を指摘した。 また、フィンランドにおける出入国管理政策・行政を担うFinnish Immigration Services/Maahanmuutovirastoの歴史と出入国管理および在留管理庁の比較史について、フィンランド人研究者とともに共著論文を執筆した。こちらの論文は2019年10月に学術雑誌Migration Historyに投稿し、査読結果を受けて修正中である。この論文は、第二次世界大戦の終了に伴う領土変更と引き揚げ、そして冷戦が、日本とフィンランドという対照的な2カ国の戦後の出入国管理政策とナショナリティをどのように規定したかについて述べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度はこれまでの研究で蓄積してきた知見を公表し、今後の研究への展望を得ることを目的としていた。そのため昨年度から執筆してきた論文や研究会等で意見を得てきた論考が刊行され、今後の調査を進めていく知的見通しが得られたことは順調に進展していると言ってよいと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第二次世界大戦直後のフィンランドにおける非正規移住と引き揚げの状態について先行研究をまとめるとともに文書調査を進め、フィンランドでの研究者との共著論文執筆と刊行を目指す。ただし、新型コロナウイルスの世界的流行に伴い、海外での調査が円滑に行えない可能性があるが、海外研究者との論文執筆は可能な限りオンラインでの打ち合わせに切り替え、また文書館にどの程度オンラインで文書を提供していただけるか交渉してみる。
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