2020 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the Experiences of End-of-life Cancer Patients in Modern Society
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19K13915
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
歸山 亜紀 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (50767358)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | がん患者 / 闘病ブログ / 終末期 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、初年度に引き続き1)分析対象となるデータ(ブログ上のテキスト)収集と整形を行った。2)分析をするための外部変数(病名告知や終末期の判定に関わる時間変数等)の付与をおこなった。 探索的な分析を行ったところ、患者の多くが自分の病名および予後・余命を医師から知らされており、自身の死が避けられないことについて「オープン認識」(グレイザー&ストラウス1965)であることがわかった。しかし、死の時期やその時の身体状態については、死の2か月前という最終末期でも患者の認識は不確かなものにとどまっていることもわかった。また、患者の死にゆく過程は個人のなかで矛盾のないものではなく、その時々の身体状態等によって、時には治癒や社会復帰へのわずかな希望が語られたり、時には避けられない死について語られたりしている。回復の見込みがなくなったときから、患者には「回復」のための医療ではなく「安らぎ」を与えるための医療(おもに疼痛のコントロール)が提供されることになる。しかし、それ以外の「安らぎ」を医療が提供することは難しい。今後は、患者の語りから、終末期に患者が必要となる「安らぎ」を探索する。 そのほか、2021年2月に行われたWorld Cancer Week 2021(がんの医療・社会課題を考える日本最大級のオンラインカンファレンス)に参加し、当事者、家族、医療者、製薬企業、一般企業といったがん患者をめぐるさまざまなアクターについての動向等の最新情報を収集することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では、2020年度には完成データセットを用いた詳細な分析を予定していたが、未だデータセットの細かな整形、クリーニングや外部変数の付与を行っている段階である。データ収集方法のひとつとして、プログラミングによるスクレイピングを予定していたが、これによって収集できるデータが多くなかったこと、その代替手段として学生アルバイトによる手作業でのデータ収集、整形、クリーニングを見込んでいたが、2020年度の社会状況では実現することはできなかったこと、などが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も学生アルバイトを利用することは難しいと予想されるが、早い時期にデータセットを完成させる。また、2021年6月にはこれまでの分析結果を学会で報告する。研究計画では、ブログでの語りとインタビューでの語りの比較を予定しているので、インタビューデータの入手(データシェアリングを利用する)も早い時期に行い、テキストデータ化を行う。
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Causes of Carryover |
Covid-19パンデミック化において、学会、研究会に充てていた旅費、学生アルバイトに充てていた謝金の使用ができなかったためである。 2021年度もこの状況が改善される見通しは低いため、これらについては計画変更を行い、分析に使用するアプリケーションソフトの追加パッケージの購入に充てることになると考えている。
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